核心概念
本稿では、インドのケーララ学派の数学者・天文学者たちが、様々な天文学的問題、特に惑星の「中心差」に関連して重要となるarcsin関数の値をどのように計算したかを解説する。
要約
ケーララ学派におけるarcsin関数の計算方法
本稿は、インドのケーララ学派の数学者・天文学者たちがarcsin関数の値をどのように計算したかを解説する研究論文である。arcsin関数の値の計算は、惑星の「中心差」に関連する天文学的問題において特に重要となる。本稿では、ナーラヤナ・パンディタの弟子であり、より正確な月行表を作成したことで知られるサンガマグラーマ・マーダヴァ(1340年頃-1425年頃)のアイデアを源流とする、4つの異なる計算方法が紹介されている。これらの方法はすべて、ニーラカンタ・ソーマヤジ(1444年-1545年)の『タントラサングラハ』に記載されている。
4つの計算方法
- 引数が小さい場合の簡易な方法: この方法は、マーダヴァ-ニュートン級数に基づいており、小さな弧の長さを計算するために用いられる。
- 引数が小さい場合の反復法: この方法は、最初の近似値から始めて、より正確な値が得られるまで計算を繰り返す反復計算を用いる。
- 参照表を用いる方法: この方法は、あらかじめ計算されたarcsin関数の値をまとめた表を用いる。
- 引数が大きい場合の方法: この方法は、2つの弧の差を、それらの弧のジヤとコジヤを用いて近似する公式に基づいている。
本稿では、各方法について、サンスクリット語の原文と英語の翻訳、そして具体的な数値例を用いた解説がなされている。さらに、ジエシュタデーヴァ(1500年頃-1575年頃)の『ユクティバーシャ』に記載されている、円周率の計算方法についても紹介されている。この方法は、arcsin関数を用いた独特な方法である。
本稿の意義
本稿は、ケーララ学派の数学者・天文学者たちが、arcsin関数の値を計算するために、独創的で洗練された方法を開発していたことを示している。これらの方法は、当時の天文学的問題を解決するために必要不可欠なものであり、その後の数学の発展にも大きく貢献したと言えるだろう。
統計
Bhāskara Iの正弦関数近似式における最大相対誤差は1.8%未満である。
Mādhavaの正弦関数表の最初の項目は、jyā (225′) = 809422′′′ である。
jyā (s) = 3000′の場合、sの値は3646′ 11′′ 14′′′ と計算される。
引用
“Subtract the degrees of the bhuja (or koti) from the degrees of half a circle (i.e., 180◦). Then multiply the remainder by the degrees of the bhuja (or koti) and put down the result at two places. At one place subtract the result from 40500. By one-fourth of the remainder (thus obtained) divide the result at the other place as multiplied by the antyaphala (i.e., the epicyclic radius). Thus is obtained the entire bahuphala (or kotiphala) for the Sun, Moon, or the star-planets. So also are obtained the direct and inverse Rsines.”
“Multiply 10125 by the given jy¯a and divide by the quarter of the given jy¯a plus the radius; subtracting the quotient from the square of 90, extract the square-root and subtract (the root) from 90; the remainder will be in degrees and minutes; thus will be found the arc of the given jy¯a without the table of jy¯a-s.”
“The sum of the kojy¯a-s divided by the difference of those two jy¯a-s, which are close to each other, forms the cheda (divisor). Twice the trijy¯a divided by this is the difference between the corresponding arcs.”