核心概念
本論文では、2 次元空間における圧縮性オイラー方程式に対して新しい凸積分アプローチを確立し、このアプローチを用いて、局所最大散逸基準を満たさない解の存在を示すことで、局所最大散逸基準の破綻を証明する。
要約
論文要約
本論文は、2 次元空間における圧縮性オイラー方程式の弱解の非一意性と、解の選択基準として提案されている局所最大散逸基準の妥当性について考察した論文である。
圧縮性オイラー方程式は、滑らかな初期データに対しても時間大域的に滑らかな解が存在しないことが知られており、弱解の概念が導入されている。しかし、弱解は一意ではなく、物理的に意味のないエネルギーが増加する解も含まれている。そのため、エネルギー不等式を満たす解を「許容解」として、物理的に妥当な解を絞り込む試みがなされてきた。
しかし、許容解であってもなお一意性が成り立つとは限らず、凸積分の技術を用いることで、ある種の初期データに対して無限個の許容解が構成できることが知られている。そこで、さらなる解の選択基準として、大域的/局所最大散逸基準が提案されている。
本論文では、以下の2点が主要な貢献として挙げられる。
エネルギー不等式を満たす圧縮性オイラー方程式に対する新しい凸積分アプローチの構築
従来の凸積分アプローチでは、与えられた密度に対して運動量のみを生成していた。本論文では、エネルギーとエネルギーフラックスも同時に生成する新しいアプローチを開発した。これにより、許容解をより簡単に構成することが可能となった。
局所最大散逸基準を満たさない解の存在証明
開発した新しい凸積分アプローチを用いることで、一次元リーマン問題の自己相似解を二次元に拡張した解よりもエネルギー散逸が小さい「wild solution」を構成した。これは、局所最大散逸基準が自己相似解を排除してしまうことを意味し、局所最大散逸基準の破綻を示唆する結果である。