核心概念
本稿では、多様体の三角形分割の骨格がユークリッド空間に埋め込み可能かどうかを、部分多様体の補集合を用いて判定する基準を示し、その応用例として、Sq 上の Sp-束の (q-1) 骨格が Rp+q に埋め込み可能であることを示す。
要約
論文概要
本論文は、位相幾何学、特に多様体の三角形分割における骨格の埋め込み可能性に関する研究論文である。
研究背景
- van Kampen-Flores の定理によれば、(2d + 2) 次元単体の d-骨格は R2d に埋め込むことができない。
- Nevo と Wagner は、(2d + 1) 次元球体の任意の三角形分割の d-骨格は R2d に埋め込むことができないことを証明した。
- 過去の研究では、2d + 1 次元の多様体 M が Z/2 ホモロジー球面または全 Stiefel-Whitney 類 w(M) が非自明な場合、M の任意の三角形分割の d-骨格は R2d に埋め込むことができないことが示されている。
- また、オイラー標数が奇数の向き付け可能な閉 2d 次元多様体 M の任意の三角形分割の d-骨格は R2d に埋め込むことができないことも示されている。
問題提起
上記の先行研究は、いずれも非埋め込み可能性に関するものであり、多様体全体が R2d に埋め込めない場合を扱っている。そこで、本論文では、閉多様体 M が R2d に埋め込めない場合、M の任意の三角形分割の d-骨格も R2d に埋め込めないかどうかという問題に取り組む。
研究結果
- 本論文では、M を 2d 次元(d ≥ 2)の閉多様体とし、M の滑らかな三角形分割の d-骨格が R2d に埋め込めないための基準を、M の部分多様体の補集合を用いて証明する。
- この基準を用いることで、上記の問いに肯定的な答えを与える様々な例を提示する。特に、d = 1 の場合とは対照的に、d-骨格が R2d に埋め込めない三角形分割を持つ閉 2d 次元多様体の例が無限に存在することを示す。
主な定理と命題
- 定理 1.2: n 次元多様体 M に対し、M − L が Rm に埋め込み可能な p 次元コンパクト部分多様体 L ⊂ M が存在する場合、M の任意の滑らかな三角形分割 K に対し、(n − p − 1) 骨格 Kn−p−1 は Rm に埋め込み可能である。
- 命題 1.5: 連結な n 次元多様体 Mi の p 次元部分多様体 Li (i = 1, ... , k)に対して、Mi − Li が Rn に埋め込み可能であるとする。このとき、連結和 M1#···#Mk の p 次元コンパクト部分多様体 L であって、M1#···#Mk − L が Rn に埋め込み可能であるものが存在する。
応用例
- 系 1.3: Sq 上の Sp-束 M の任意の滑らかな三角形分割の (q − 1) 骨格は Rp+q に埋め込み可能である。
結論
本論文は、多様体の三角形分割の骨格の埋め込み可能性に関する新たな知見を提供し、位相幾何学における埋め込み問題の理解を深めるものである。
統計
(2d + 2) 次元単体の d-骨格は R2d に埋め込むことができない。
d = 1 の場合、種数 ≤ 0 の曲面の三角形分割の 1-骨格は R2 に埋め込むことができない。
d ≥ 2 の場合、d-骨格が R2d に埋め込める三角形分割を持つ閉 2d 次元多様体の例が無限に存在する。
引用
"Then one may naively ask: Which connected closed manifold triangulations have the d-skeleta embeddable into R2d?"
"The next problem is whether the converse holds true or not. Namely, if M is nonembeddable into R2d, can we also say that the d-skeleton of any triangulation of M is also nonembeddable into R2d?"