核心概念
本稿では、大きなガロア群、特に交代群Anを持つガロア拡大の生成元の高さを考察し、特定の古典的な構成法から得られる生成元の高さがnの増加に伴い無限大に発散することを証明する。
要約
本稿は、有理数体のガロア拡大、特にガロア群が交代群Anとなる場合の生成元の高さを考察する研究論文である。
論文の構成
- まず、導入部分において、Lehmer予想やBogomolov propertyといった、代数的数の高さに関連する重要な概念や先行研究が紹介される。
- 主結果として、対称群Snの場合にAmorosoによって証明された定理の類似が、交代群Anの場合にも成り立つことが示される。
- 証明は、乗法的生成元と加法的生成元の2つのケースに分けられる。
- 最後に、証明で用いられた手法を他の種類のガロア群に適用できるかどうか、また具体的な多項式族への応用について考察される。
主結果
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定理 1.4 (乗法的生成元):次数n≥5の代数的数βの共役をβ1, ..., βnとし、Gal(Q(β1, ..., βn)/Q) = Anとする。a1, ..., an∈Zに対してα = βa1
1 ... βan
nとするとき、以下の(1), (2)が成り立つ。
- (1) αがQ(β1, ..., βn)/Qの生成元であることと、高々2つの異なる添字i, jに対してai = ajが成り立つことは同値である。
- (2) αがQ(β1, ..., βn)/Qの生成元であり、βが単数であるとき、h(α)はnの増加に伴い無限大に発散する。
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定理 1.5 (加法的生成元):次数n≥5の代数的整数βの共役をβ1, ..., βnとし、Gal(Q(β1, ..., βn)/Q) = Anとする。a1, ..., an∈Zに対してα = a1β1 + ... + anβnとするとき、以下の(1), (2)が成り立つ。
- (1) αがQ(β1, ..., βn)/Qの生成元であることと、高々2つの異なる添字i, jに対してai = ajが成り立つことは同値である。
- (2) αがQ(β1, ..., βn)/Qの生成元であるとき、h(α)はnの増加に伴い無限大に発散する。
証明手法
- 乗法的生成元の場合:証明は、Smythの結果を応用したProposition 3.1と、Mahler測度とsn関数を関連付けるProposition 3.4、sn関数の評価を与えるProposition 3.6、cnの漸近評価を与えるProposition 3.7を組み合わせることで行われる。
- 加法的生成元の場合:証明は、乗法的生成元の場合と同様の手法を用いるが、Mahler測度の変化を記述するLemma 4.3が重要な役割を果たす。
結論
本稿では、大きなガロア群を持つガロア拡大の生成元の高さが、特定の条件下で無限大に発散することを示した。この結果は、Amorosoの予想を支持するものであり、代数的数の高さに関するさらなる研究の進展が期待される。
引用
αがQ(β1, ..., βn)/Qの生成元であることと、高々2つの異なる添字i, jに対してai = ajが成り立つことは同値である。
βが単数であるとき、h(α)はnの増加に伴い無限大に発散する。