核心概念
この記事では、偶数標数の有限体において、特定の有理関数を適用した結果もまた原始正規元となるような元が存在する条件について考察しています。
要約
この論文は、有限体の理論、特に原始元と正規元の同時発生に関するものです。著者らは、有限体 $\mathbb{F}{q^m}$ ($q$ は偶数の素数冪、$m\geq 2$ は整数) において、$\alpha$ と $f(\alpha)$ の両方が $\mathbb{F}q$ 上同時に原始的で正規となるような元 $\alpha$ の存在性を調べます。ここで、$f(x) = \frac{ax^2 + bx + c}{dx + e} \in \mathbb{F}{q^m}(x)$ は、行列 $F = \begin{pmatrix} a & b & c \ 0 & d & e \end{pmatrix} \in M{2 \times 3}(\mathbb{F}_{q^m})$ のランクが 2 であるような有理関数です。
論文では、このような元が存在するための十分条件を確立し、少数の例外的なペア $(q, m)$ を除いて、ほぼすべての偶数標数の体がそのような元を持つことを示しています。証明には、指標和、ふるい法などの数論的手法が用いられています。
論文の構成は以下の通りです。
- セクション3では、原始正規ペアの存在に関する下限を推定します。
- セクション4では、「素数ふるい法」を用いることで、より効率的な結果を得るために、十分条件を弱めます。
- セクション5では、考えられるすべてのケースについて、偶数標数の体に存在条件を適用し、主定理を証明します。
- セクション6では、計算機を用いて、主定理で示された例外的なペア $(q, m)$ について、実際に例外となるかどうかを調べます。
- セクション7では、関連する2つの予想を述べて、論文を締めくくります。
この論文は、有限体の理論における重要な問題に取り組んでおり、符号理論や暗号理論などの応用分野にも関連しています。
統計
q > 211 のとき、b2 − 4ac ≠ 0 であるような f(x) = ax2 + bx + c に対して、α と f(α) が両方とも原始的であるような元 α ∈ Fqm が常に存在する。
m′ が奇数で m = 2km′、k ≥ 0 のとき、m′|q − 1 ならば、(q, m) が (2, 2), (2, 4), (2, 8), (2, 16), (4, 2), (4, 3), (4, 4), (4, 6), (4, 8), (4, 12), (8, 2), (8, 4), (8, 7), (8, 8), (8, 14), (16, 2), (16, 3), (16, 4), (16, 5), (16, 6), (16, 15), (32, 2), (64, 2), (64, 4), (128, 2), (256, 2), (512, 2), (1024, 2) のいずれでもない限り、α と f(α) = (ax2 + bx + c)/(dx + e) が両方とも Fq 上で同時に原始的で正規であるような元 α ∈ Fqm が存在する。ここで、a, b, c, d, e ∈ Fqm, a ≠ 0, dx + e ≠ 0 である。
m′ ∤ q − 1 ならば、(q, m) が (2, 3), (2, 5), (2, 6), (2, 7), (2, 9), (2, 10), (2, 11), (2, 12), (2, 13), (2, 14), (2, 15), (2, 18), (2, 20), (2, 21), (2, 24), (2, 30), (4, 5), (4, 7), (4, 9), (4, 10), (8, 3), (8, 5), (8, 6), (32, 3) のいずれでもない限り、α と f(α) = (ax2 + bx + c)/(dx + e) が両方とも Fq 上で同時に原始的で正規であるような元 α ∈ Fqm が存在する。ここで、a, b, c, d, e ∈ Fqm, a ≠ 0, dx + e ≠ 0 である。
引用
"For all q > 211, there always exists an element α ∈ Fqm such that α and f(α) are both primitive, where f(x) = ax2 + bx + c with b2 − 4ac ≠ 0."