核心概念
概複素多様体上の複素ベクトル束、特に接束への複素直線束の埋め込み可能性を判定するための必要十分条件を、特性類、特にチャーン類の消滅を用いて提示する。
本論文は、概複素多様体上の複素直線場の存在性と、複素ベクトル束への複素直線束の埋め込み可能性を、特性類を用いて考察しています。
論文の背景と目的
特性類は、ベクトル束の大域的な性質を表す重要な位相不変量であり、線形独立な切断の存在を妨げる場合があります。
例えば、複素m次元ベクトル束 ξ : Cm → E → X (XはCW複体) が与えられたとき、i番目のチャーン類 ci(ξ) ∈ H2i(B; Z) は、ξ の m+1−i 個の線形独立な切断の存在に対する主要な障害となります。
特に、実ベクトル束の線形独立な切断の存在を保証するコホモロジー的な条件の研究は、豊富な歴史があります。
しかし、複素ベクトル束の場合、関連する文献はそれほど多くありません。
本論文は、複素ベクトル束、特に概複素多様体の接束への複素直線束の埋め込み可能性を判定するための必要十分条件を、チャーン類の消滅を用いて提示することを目的としています。
主要な結果
本論文では、以下の主要な結果が示されています。
複素直線束の埋め込み: 2m次元CW複体X上の複素m次元ベクトル束ξと、X上の複素直線束ℓに対して、ℓがξに埋め込まれるための必要十分条件は、チャーン類cm(ξ − ℓ) = 0 が成り立つことです。
2つの複素直線束の埋め込み: 2m次元CW複体X上の複素m次元ベクトル束ξと、X上の2つの複素直線束ℓ1, ℓ2に対して、ℓ1 ⊕ ℓ2 がξに埋め込まれるための必要十分条件は、特定の条件下で、チャーン類cm+1−i(ξ − ℓ1 ⊕ ℓ2) = 0 (i = 1, 2) が成り立つことです。
3つの複素直線束の埋め込み: 2m次元CW複体X上の複素m次元ベクトル束ξと、X上の3つの複素直線束ℓ1, ℓ2, ℓ3に対して、ℓ1 ⊕ ℓ2 ⊕ ℓ3 がξに埋め込まれるための必要十分条件は、特定の条件下で、チャーン類cm+1−i(ξ − ℓ1 ⊕ ℓ2 ⊕ ℓ3) = 0 (i = 1, 2, 3) が成り立つことです。
これらの結果は、Moore-Postnikov障害理論を用いて証明されています。
論文の意義
本論文は、概複素多様体上の複素直線場の存在性に関する従来の研究を拡張し、複素ベクトル束への複素直線束の埋め込み可能性を判定するための具体的な方法を提供しています。これらの結果は、微分トポロジーや複素幾何学における様々な問題に適用できる可能性があります。