素粒子物理学において、散乱振幅の計算は基礎となる理論を検証し、新しい物理を探索するための重要なツールである。従来のファインマン図を用いた手法は、高エネルギー散乱や多粒子散乱において計算が複雑になるという問題点がある。一方、オンシェル再帰関係を用いた手法は、低点振幅から高点振幅を系統的に構成できるため、近年注目を集めている。
オンシェル再帰関係は、外部粒子の運動量を複素変数zでシフトし、振幅を複素関数として扱う。この時、zの特定の値において振幅は極を持ち、低点振幅の積に因子分解される。この性質を利用することで、低点振幅から高点振幅を再帰的に構成することができる。本論文では、大規模な理論にも適用可能な運動量シフト手法であるALTシフトを導入し、その性質について議論している。
ALTシフトを用いることで、電弱理論におけるWボソンとZボソンの4点振幅を、3点振幅のみから構成することができる。具体的には、WWWW振幅とWWZZ振幅を構成し、接触項が自然に現れることを示している。従来のファインマン図を用いた手法では、接触項はゲージ対称性などを考慮して導入する必要があったが、ALTシフトを用いた手法では、運動量シフトに起因する項として自然に現れる。
ALTシフトを用いて構成した4点振幅は、高エネルギーでE^2に比例して発散する。この発散は、標準模型のヒッグス粒子を導入することでキャンセルされる。本論文では、ヒッグス二重項模型とヒッグス三重項模型を例に挙げ、UV完備性について議論している。
本論文では、ALTシフトを用いたオンシェル再帰関係による大規模電弱理論における4点振幅の構成とUV完備性について議論した。ALTシフトは、接触項の不定性を回避し、高エネルギーでの振る舞いを自然に保証するという利点を持つ。この手法は、電弱理論のみならず、他のゲージ理論にも応用可能であり、今後の発展が期待される。
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