この論文は、高次元における面積最小化問題において、リプシッツグラフの極限として得られるCartesianカレントの性質を考察しています。特に、共次元が2以上の場合は、共次元1の場合に知られている結果とは大きく異なる振る舞いをすることを示しています。
まず、共次元1の場合の面積最小化問題について簡単に説明します。滑らかな境界を持つ有界領域Ω⊂Rnと、∂Ω上で定義された滑らかな実数値関数ϕを考えます。境界値ϕを持つリプシッツ関数のクラスAの中で面積汎関数を最小化する問題を考えると、Ωが平均曲率ベクトルに関して非負である場合、Aの中に唯一の最小値を与える関数uが存在します。さらに、uはΩの内部で滑らかであり、uのグラフはΩ×R内の全ての競合相手(必ずしもグラフである必要はない)の中で面積を最小化します。
次に、共次元が高い場合(m≥2)について考察します。LawsonとOssermanは、高次元の場合、共次元1の場合に得られていた一意性、存在性、正則性に関する結果が成り立たないことを示しました。
高次元の場合、面積最小化問題の解は、リプシッツグラフの極限として得られるCartesianカレントとして捉えることができます。Cartesianカレントは、BV関数のグラフで表される部分と、純粋に垂直な部分の和として表現されます。本論文では、このCartesianカレントが、従来の予想に反して、境界から離れた場所に大きな垂直部分と非極小部分を持つ可能性があることを示しました。
論文では、まず点状の特異点を持つ例を構成します。具体的には、原点の近傍で定義された、∂1w1が原点で非退化な極小値を持つような、極小曲面系を満たす解析的な解(w1, w2)を構成します。次に、x1軸とw1軸を交換することで、原点において垂直な接平面を持つ滑らかで極小なグラフを得ます。
さらに、この構成を修正することで、3次元のパッチ全体で垂直になるような例を構成します。具体的には、勾配制約∂1w1≥0の下で面積を最小化する問題を考えます。これは、自由境界問題(自由境界領域は、第一成分のx1方向の微分がゼロになる領域)となります。この問題を解くことで、論文で示された条件を満たす写像wを得ることができます。
本論文の結果は、高次元における面積最小化問題の解の構造に関する新たな知見を与えます。特に、Cartesianカレントの垂直部分が最大次元を持ち、しかもそれが非極小であり、定義域内の超曲面に射影されることを示しています。
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