核心概念
本稿では、磁化の時間変動における秩序と無秩序を特徴付ける情報量の尺度である順列エントロピーを用いることで、ハミルトン平均場モデルの準定常状態を磁化のみに基づいて特徴付けることができることを示す。
要約
ハミルトン平均場モデルにおける準定常状態の特徴付け
本論文は、長距離相互作用を有する系を記述するために用いられる単純なモデルであるハミルトン平均場(HMF)モデルにおける準定常状態(QSS)の解析に関する研究論文である。
研究目的
本研究の目的は、HMFモデルのQSSを特徴付けるために、秩序パラメータである磁化の時間変動を、情報量の尺度である順列エントロピーと複雑さ-エントロピー平面を用いて解析することである。
方法
- 大規模なスピン系(N = 10^6)を用いた数値シミュレーションを実施。
- スピンは、ウォーターバッグ分布関数に従って、|θi| ≤θ0 および |pi| ≤p0 のランダムな値で初期化。
- 運動方程式は、古典的な2次リープフロッグ法を用いて数値的に解かれた。
- QSSにおける磁化Mの時間変動を解析するために、順列エントロピーと複雑さ-エントロピー平面が計算された。
結果
- 磁化Mから計算された順列エントロピーは、平均値MQSSに影響されないことが示された。
- 順列エントロピーと複雑さ-エントロピー平面は、初期エネルギーu0 ≲0.6ではMの変動が秩序に向かう傾向があり、構造が少なくなることを示した。
- より高いエネルギーでは、磁化変動の時間系列は、無秩序に向かい、より多くの構造を持つ傾向がある。
- 複雑さ-エントロピー平面は、その順列エントロピーHと統計的複雑さCが平面の左下の領域に位置することを示しており、これは間欠的な決定論的カオス系の特性である。
- さらに、Hの最小値は、磁化および非磁化QSS間の相転移が起こると報告されている初期エネルギーu0および磁化M0と一致する。
結論
順列エントロピーを用いることで、HMFモデルのQSSを、その秩序パラメータである磁化の時間系列の解析のみによって特徴付けることができた。この測定方法は強力なツールであり、今後の研究において、熱力学的平衡状態におけるHMFモデルの特徴付けに利用できる可能性がある。
統計
スピン数: N = 10^6
時間ステップ: ∆t = 0.01
反復回数: N = 2^17 = 131,072
時間窓サイズ: d = 6
エンベディング遅延: τ = 1