核心概念
優れた要件エンジニアは、ステークホルダーとの対話能力、的確な判断力、ビジネス理解、要件エンジニアリングの実践に関する深い知識といった複数の属性を必要とし、これらの属性は相互に関連し合いながら、優れた要件エンジニアとしての能力を発揮する基盤となる。
書誌情報: Barbosa, L., Freire, S., Maciel, R. S. P., Mendonça, M., Kalinowski, M., Codabux, Z., & Spínola, R. (2024). Attributes of a Great Requirements Engineer. Journal of Systems and Software, 112200. https://doi.org/10.1016/j.jss.2024.112200
研究目的: ソフトウェア開発における要件エンジニアの役割の重要性が高まる中で、優れた要件エンジニアが持つべき属性とその関係性、そしてそれらを身につけるための戦略を明らかにすることを目的とする。
方法: ブラジルのソフトウェア開発に従事する18人の実務家(要件エンジニアおよびプロジェクトマネージャー)を対象に、優れた要件エンジニアの重要な属性に関するアンケート調査と、そのうち11人へのフォローアップインタビューを実施した。インタビューでは、特定された属性の定義、重要性、獲得のための戦略、実際の活用例について詳細に聞き取った。
主な結果:
優れた要件エンジニアの属性として、22個の属性が特定された。
特定された属性は、「性格」「管理」「技術」「社会性」の4つのカテゴリに分類された。
最も頻繁に言及された属性は、「ステークホルダーと対話する際の探求力」「的確な判断力」「ビジネス理解」であった。
属性間の関係性を示すマップが作成され、複数の属性が共通の概念によって結びついていることが明らかになった。
属性を獲得するための戦略として、38個の戦略が特定された。
最も頻繁に言及された戦略は、「研修への参加」「ドメイン知識の習得」「すべての関係者との対話」であった。
結論:
優れた要件エンジニアは、技術的なスキルだけでなく、コミュニケーション能力、問題解決能力、ビジネス理解など、多岐にわたる属性を必要とする。
これらの属性は相互に関連し合いながら、優れた要件エンジニアとしての能力を発揮する基盤となる。
研修への参加、ドメイン知識の習得、関係者との積極的なコミュニケーションなど、様々な戦略を通じて、これらの属性を育成することが可能である。
本研究の意義:
本研究は、優れた要件エンジニアの属性とその関係性を体系的に明らかにした初めての試みである。
特定された属性と戦略は、要件エンジニアの育成、評価、採用活動において有用な指針となる。
今後の研究:
特定された属性の重要度を、要件エンジニアとプロジェクトマネージャーのそれぞれの視点から評価する。
要件エンジニアにとって望ましくない属性を調査する。
技術的なスキルとソフトスキルをバランスよく育成するための教育戦略を検討する。
統計
アンケート調査には18人のブラジルのソフトウェア実務家が参加した。
そのうち11人がフォローアップインタビューに回答した。
特定された22個の属性のうち、「ステークホルダーと対話する際の探求力」が最も多く言及された (18%)。
属性は、「性格」(30%)、「社会性」(29%)、「管理」(22%)、「技術」(19%) の4つのカテゴリに分類された。
特定された38個の戦略のうち、「研修への参加」が最も多く言及された (19%)。