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LLOR:OpenMPプログラムのデータ競合エラーを自動修正するツール


核心概念
LLORは、C/C++およびFortranで記述されたOpenMPプログラムにおけるデータ競合エラーを自動的に修正するツールであり、バリアやordered領域の配置を提案することで並列プログラムの正確性を向上させる。
要約

LLORは、C/C++およびFortranで記述されたOpenMPプログラムのデータ競合エラーを修正するためのツールである。LLORは、並列領域へのバリアの配置や、並列forループ内のordered領域への文の配置を提案することで、データ競合エラーを修正する。また、プログラムの正当性を維持しながら、既存のバリアやordered領域の削除を試みる。LLORは、LLVMコンパイラインフラストラクチャ上に構築された静的データ競合検出ツールであるLLOVを活用している。

LLORのアーキテクチャは、計測器と修復の2つのコンポーネントで構成されている。計測器コンポーネントは、並列領域の場合にバリアの可能な位置を示すメタデータをプログラムに追加する。並列forループの場合、このメタデータは、ordered領域の一部でなければならない可能性のある文をマークする。修復コンポーネントは、修復候補を使用してLLOVを呼び出し、プログラムにエラーがないかどうかをチェックする反復的なアプローチを取る。LLOVがデータ競合を特定した場合、後続の反復でそれらを回避するために、これらのエラーから制約が生成される。これらの制約を使用してソルバーが呼び出され、次の修復候補を生成する際に、どの同期構造を有効または無効にするかを決定するソリューションが得られる。

LLORは、エラーのない修復候補を見つけることができれば、修復されたプログラムのLLVM中間表現(LLVM IR)とサマリーファイルを生成する。サマリーファイルには、プログラムを修復するために必要な変更と、元のC/C++またはFortran入力プログラムのソースコードの位置の詳細が含まれている。

LLORは、データ競合エラーのみを修正しようとするため、並列領域に新しいバリアを追加するか、並列forループ内の命令のサブセットに対してordered領域を作成することで解決策を提案する。また、不要なバリアやordered領域を削除しようと試みる。データ競合は、複数のスレッドが同じ共有変数に同時にアクセスし、それらのアクセスの少なくとも1つが書き込みである場合にのみ発生する可能性がある。これを考慮して、計測器コンポーネントは、共有変数を読み書きしているすべての命令を識別する。

これらの命令が並列領域にある場合、LLORは、これらの命令の前にバリアを挿入することにより、可能な修復候補を生成する。これらの命令が並列forループ内にある場合、LLORは、ordered領域内に配置する必要がある命令の最小のサブセットを選択することにより、可能な修復候補を生成する。プログラム内の既存のバリアやordered領域は、実際にプログラムの正当性に必要かどうかを確認するために削除される。この手法を用いることで、共有変数を扱う命令の数は、通常、プログラム内の命令の総数よりもはるかに少ないため、修復候補の探索空間を大幅に削減することができる。

LLORは、OpenMP APIを使用して記述されたC/C++およびFortranプログラムのデータ競合エラーを修正できる唯一のツールである。

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統計
LLORは、415のC/C++およびFortranプログラムのベンチマークスイートに対して評価された。 ベンチマークセットは、DataRaceBenchテストスイート、Exascaleプロジェクト、Rodiniaテストスイート、Parallel Research Kernels、およびLLORの開発中に導入された追加のベンチマークで構成されている。 LLORは、有効なデータ競合エラーを持つプログラムの80%以上を修復することができた。
引用
"To the best of our knowledge, ours is the only technique and tool that can propose a fix for parallel programs written using the OpenMP API." "LLOR was able to repair more than 80% of the programs that had a valid data race error in them."

抽出されたキーインサイト

by Utpal Bora, ... 場所 arxiv.org 11-25-2024

https://arxiv.org/pdf/2411.14590.pdf
LLOR: Automated Repair of OpenMP Programs

深掘り質問

OpenMP以外の並列プログラミングモデル(pthreadsなど)で記述されたプログラムのデータ競合エラーを修正するためにLLORはどのように拡張できるか?

LLORは現状OpenMPに特化していますが、pthreadsのような他の並列プログラミングモデルにも適用できるように拡張することが可能です。 そのためには、以下の点が重要になります。 中間表現の汎用化: LLORは現在LLVM IRを中間表現として使用していますが、pthreadsを扱うためには、より汎用的な中間表現を採用する必要があります。これは、pthreadsのAPIコールを表現できる抽象構文木(AST)などが考えられます。 同期プリミティブへの対応: LLORは現在、OpenMPのバリアとordered領域を用いてデータ競合を解消しています。pthreadsでは、mutexやセマフォ、条件変数など、異なる同期プリミティブが使用されます。LLORを拡張するには、これらのプリミティブを理解し、適切に配置できる機能が必要です。 検証ツールの置き換え: LLORはOpenMPの検証ツールとしてLLOVを使用していますが、pthreadsプログラムの検証には、HelgrindやThreadSanitizerなど、異なるツールを使用する必要があります。LLORのアーキテクチャはツールに依存しないように設計されているため、検証ツールを交換することで対応できます。 これらの拡張により、LLORはOpenMP以外の並列プログラミングモデルで記述されたプログラムのデータ競合エラーも修正できるようになります。

データ競合エラーを修正するために、バリアやordered領域の配置以外の方法をLLORが提案できるようにするにはどうすればよいか?

LLORは現状、バリアとordered領域の配置に焦点を当てていますが、データ競合の修正には、他にも有効な方法があります。 トランザクションメモリ: トランザクションメモリは、プログラムの一部をアトミックに実行するための仕組みです。LLORは、データ競合が発生する可能性のあるコード領域を特定し、その領域をトランザクションとして実行するようにプログラムを変換できます。 データ構造の変更: データ競合は、複数のスレッドが同じデータ構造にアクセスすることによって発生します。LLORは、データ構造を分割したり、複製したりすることで、競合が発生しないようにプログラムを変更できます。 アルゴリズムの変更: 場合によっては、アルゴリズム自体を変更することで、データ競合を回避できることがあります。LLORは、データ競合が発生する原因を分析し、より並列性の高いアルゴリズムを提案できる可能性があります。 これらの方法をLLORに組み込むためには、それぞれの方法に関する知識ベースを構築し、プログラム分析と変換の機能を拡張する必要があります。

LLORは、プログラムのパフォーマンスへの影響を最小限に抑えながら、データ競合エラーを修正できるか?

LLORは、プログラムのパフォーマンスへの影響を最小限に抑えるように設計されています。 最小限の同期: LLORは、データ競合を修正するために必要な最小限のバリアやordered領域を配置しようとします。これは、過剰な同期によるパフォーマンスの低下を防ぐためです。 MaxSATソルバーの利用: LLORは、配置するバリアやordered領域を決定するために、MaxSATソルバーを使用します。MaxSATソルバーは、制約を満たす解の中で、最適な解(この場合は同期コストが最小限になる解)を見つけ出すことができます。 mhs戦略との比較: LLORは、MaxSATソルバーに加えて、より高速なmhs戦略も提供しています。mhs戦略は、必ずしも最適解を見つけ出すとは限りませんが、多くの場合、MaxSATソルバーに近い性能を持つ解を高速に生成できます。 ただし、データ競合の修正は、プログラムのパフォーマンスに何らかの影響を与える可能性は避けられません。LLORは、パフォーマンスへの影響を最小限に抑えるように設計されていますが、最適なパフォーマンスを得るためには、修正後のプログラムに対して更なる最適化が必要になる場合があります。
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