本研究では、機械学習ポテンシャルモデルの中核をなすグラフニューラルネットワークにおいて、結晶構造のグラフ表現を改善する手法を提案した。従来のモデルでは、原子間クーロンポテンシャルに基づいた表現を用いていたが、実際のDFT計算では電子-イオンポテンシャルが重要な役割を果たしている。そこで本手法では、DFTで計算される電子-イオンポテンシャルを直接的に数値積分することで、結晶構造のグラフ表現を行った。
この手法を「直接積分外部ポテンシャル(DIEP)」と呼び、既存のM3GNETモデルと比較した。結果として、DIEPモデルは、欠陥のある結晶の総エネルギーを高精度に予測できることが示された。さらに、DIEPモデルを用いて炭素ナノチューブの破壊挙動を予測したところ、欠陥の存在下でのナノチューブの破断ひずみを正確に捉えることができた。一方、M3GNETモデルではナノチューブの破断を予測できなかった。
このように、DIEPは結晶構造の物性予測において優れた性能を示し、特に欠陥のある材料の挙動を正確に捉えられることが明らかになった。この手法は、材料設計や材料発見の高速化に貢献できると期待される。
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