本論文は、カゴメ格子系物質YCu3(OH)6[(ClxBr(1-x))3-y(OH)y]における、不規則性誘起スピンクラスターフェリ磁性について報告した研究論文である。
カゴメ格子系物質は、強いフラストレーションを持つことから、量子スピン液体状態が現れる候補物質として注目されている。ABH不規則性とは、カゴメ格子を構成する六員環において、隣接する結合の相互作用が交互に強弱を持つような不規則性を指す。本研究では、ClをドープすることでABH不規則性を制御し、磁気状態の変化を調査した。
Cl濃度が高い試料において、反強磁性秩序への転移温度以下で、磁化の温度依存性、磁場依存性に異常が見られた。具体的には、ゼロ磁場冷却過程と磁場冷却過程で磁化に差が見られ、磁場依存性においては、低磁場領域で急激な磁化の上昇が見られた。これらの結果は、試料中に強磁性クラスターが形成されていることを示唆している。
強磁性クラスターの形成メカニズムとして、ABH不規則性とキタエフ相互作用の組み合わせが考えられる。ABH不規則性により、局所的に反強磁性秩序が強化され、スピンクラスターが形成されると考えられる。さらに、キタエフ相互作用により、スピンクラスターに強磁性的なカンティングが生じ、結果として強磁性クラスターが形成されると考えられる。
本研究では、Clをドープしたカゴメ格子系物質において、ABH不規則性とキタエフ相互作用の組み合わせにより、強磁性クラスターが形成されることを明らかにした。この結果は、カゴメ格子系物質における量子スピン液体状態の理解に貢献すると期待される。
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by Arnab Seth, ... às arxiv.org 11-19-2024
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