本論文は、2次元磁性材料である単層Fe3GeTe2におけるスピン軌道トルクの第一原理計算に関する研究論文である。Fe3GeTe2は、バルク反転対称性の欠如により、電界印加による強磁性秩序パラメータの制御が可能であり、エネルギー効率の高い不揮発性磁気ランダムアクセスメモリデバイスやニューロモルフィックコンピューティングへの応用が期待されている。
従来の強磁性/重金属層からなる二層ヘテロ構造では、面内ミラー対称性のため、垂直磁化の決定論的なスイッチングは困難であった。一方、単層Fe3GeTe2は、バルク反転対称性を欠くため、電流誘起スピン軌道トルクを示し、垂直磁化のスイッチングが可能になる可能性がある。先行研究では、Fe3GeTe2のC3z対称性により、時間反転対称性を有する電界型の最低次スピン軌道トルクが生じることが予測されていたが、決定論的なスイッチングには至らなかった。
本研究では、第一原理計算を用いて単層Fe3GeTe2におけるスピン軌道トルクを計算し、磁化方向に対するトルクをベクトル球面調和関数で展開することで、高次項(ℓ= 4まで)が磁気ダイナミクスにおいて重要な役割を果たすことを明らかにした。特に、時間反転対称性を有するImY F
4,4トルクとReY D
3,2トルクの組み合わせにより、垂直磁化の決定論的なスイッチングが可能になることが示された。
本研究は、単層Fe3GeTe2におけるスピン軌道トルクを高次項まで考慮することで、垂直磁化の電界制御による決定論的なスイッチングが可能になることを示した。これは、従来の二層ヘテロ構造では実現が困難であった垂直磁化の電界制御によるスイッチングを、バルクスピン軌道トルクを用いることで実現できる可能性を示唆するものである。
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by Fei Xue, Mar... às arxiv.org 10-28-2024
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