本論文は、量子情報理論における重要な概念である非局所性、特にキューディットシステムにおける非局所性について考察しています。キュービットシステムとは異なり、キューディットシステムでは、スタビライザー状態とクリフォード演算子を用いたベルの不等式の破れなど、2レベルの対応物に対する特定の結果が一般化されないことが知られています。本論文では、連続変数系と同様に、キューディットシステムにおける非局所性にはウィグナー負値が必要であることを示し、ウィグナー負値を示す2者間エンタングルメントキューディット状態が非局所性の証拠となり得ることを明らかにしています。
論文では、キュービットのπ/8ゲートの一般化であるユニタリーキューブ演算子の随伴作用下におけるスタビライザー状態のウィグナー負値に関連する相関を調べることで、キューディットのCHSH不等式の新しい一般化を提案しています。特定のスタビライザー状態は、そのウィグナー負値に基づいて、すべてのキューディット状態の中で不等式を最大限に破ります。また、このベル演算子は、シングレットの割合の尺度となるだけでなく、ウィグナー負値の体積も定量化することを示しています。さらに、ベル状態に対して、測定回数が一定の決定論的なベルの不等式の破れを示し、その破れが対象となるキューディットよりも高次元のシステムに固有の演算子に依存することを示しています。
論文では、奇数の素数次元dについて、ウィグナー負値を示す特定の2者間エンタングルメント状態が、どのように非局所性の証拠となり得るかを示しています。また、2つのキューディットに対するベル演算子のファミリーを構築し、それがグロスのウィグナー関数に関連し、シングレットの割合とウィグナー負値の体積の尺度を提供することを示しています。ベル演算子は、ユニタリーキューブ演算子と呼ばれる、論文[26]で導入されたキュービットTゲートまたはπ/8ゲートの一般化によって回転されたキューディットパウリ演算子で構成されています。パウリ群をキューディットクリフォード群に写像すると[33, 34]、ユニタリーキューブ演算子は、スタビライザー状態がそれらによって回転されたときに、スタビライザー状態にウィグナー負値を引き起こします。対応するベルの不等式はベル状態によって破られ、同様にTゲートの局所回転の下でのパウリ演算子の線形結合であるキュービットのCHSH不等式の自然な拡張となっています。
論文では、ベル状態のスタビライザー要素のみをテストすることで、ベル演算子を構成する測定設定の数を減らすことができ、以前と同じ結果が得られることを示しています。ベルの不等式の破れの根底にあるメカニズムは論文[25]のものと同等ですが、本論文の主な貢献は、キューディットのCHSH不等式のより広範な一般化であり、ユニタリーキューブ演算子を超えた演算子にも適応できること、そしてキューディットシステムにおける非局所性の起源に関する一般的な洞察を提供することです。最後に、このベル演算子は、対応するベルの不等式を最大限に破る、エンタングルされたキューディットスタビライザー状態に適応できますが、3者を超える真の多者間エンタングルメントは検出できません。d > 3の場合、ユニタリーキューブ演算子は、その固有値が有限体の指標と呼ばれる1のd乗根であるキューディットシステムに固有に定義されます[36]。一方、論文では、スペクトルに対象となるキューディットよりも高次元のシステムの指標を含む演算子を用いて、d次元のベル状態に対する強い非局所性の破れを示しています。
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