Centrala begrepp
強相関量子系のFloquetエンジニアリングにおいて、多光子共鳴による高バンド加熱は大きな課題となるが、本研究では、二周波数駆動を用いることで、この加熱を効果的に抑制できることを実証した。
Sammanfattning
実験の概要と結果
本研究では、三次元光格子にポタシウム40原子を導入し、格子を振動させることでハバードモデルにおけるFloquetエンジニアリングを実現した。格子振動は原子に慣性力を与え、これは固体中の電子に対する交流電場と等価である。
実験方法
- まず、三次元光格子にポタシウム40原子を導入し、sバンド基底状態にトラップする。
- 次に、x方向の格子を正弦波状に振動させ、原子に周期的な外力を加える。この振動周波数を1ωとし、さらに3ωの周波数成分を持つ「キャンセル駆動」を導入する。
- 30ミリ秒の駆動時間後、バンドマッピングによりpバンドに励起された原子の割合を測定する。
実験結果
- キャンセル駆動がない場合、pバンドへの励起は顕著に観測された。
- キャンセル駆動を導入することで、pバンドへの励起は大幅に抑制され、相互作用の強さに関わらず効果が見られた。
- 最適なキャンセル駆動の強度は、ハバード相互作用の強さUに依存することが明らかになった。
理論計算との比較
実験結果を説明するために、二つのバンドと四つの格子サイトからなるFermi-Hubbardモデルを構築し、厳密対角化と時間発展計算を行った。その結果、実験で観測された最適なキャンセル駆動の強度の変化を定性的に再現することに成功した。
結論と展望
本研究は、二周波数駆動を用いることで、強相関Floquet-Hubbard系における高バンド加熱を効果的に抑制できることを実証した。この結果は、Floquetエンジニアリングを用いた量子シミュレーションや量子情報処理への応用に向けて重要な一歩である。
今後の課題
- 理論モデルの精度向上:実験結果との定量的な一致を目指し、より高次の項やバンド、有限サイズ効果などを考慮した理論モデルの構築が必要である。
- 密度・温度制御:実験における密度や温度の制御性を向上させることで、理論計算との比較をより精密に行うことができる。
- 多周波数駆動への拡張:キャンセル駆動のパラメータ数を増やすことで、より効果的な加熱抑制が可能になる可能性がある。
Statistik
格子深度は、[Vx, Vy, Vz] = [5.99(2), 14.95(3), 14.97(5)] Erec に設定。
これにより、sバンドトンネリング振幅は、x、y、z 方向にそれぞれ [224(1), 29.0(1), 28.9(3)] Hz となる。
1ω駆動強度はK1 = 1.4で固定。
駆動周波数は、ω1 = 5300 Hz × 2π。
キャンセル駆動周波数は、ω3 = 3ω1 = 15 900 Hz × 2π。
相対位相φ = 0で固定。
格子振動時間は30ミリ秒(約42トンネリング時間)。
pバンドの最小検出可能率は0.028(4)。
Citat
「強相関量子系のFloquetエンジニアリングにおいて、多光子共鳴による高バンド加熱は大きな課題となる。」
「二周波数駆動を用いることで、この加熱を効果的に抑制できることを実証した。」
「最適なキャンセル駆動の強度は、ハバード相互作用の強さUに依存することが明らかになった。」