核心概念
米国巨大テック企業に対する規制の動きが強まる中、グーグルは独占禁止法違反の可能性に直面し、マイクロソフトとOpenAIのパートナーシップは緊張関係にある。
摘要
巨大テック企業への風圧: グーグル分割とマイクロソフト・OpenAIの動向
近年、メタ、マイクロソフト、アマゾン、アップル、グーグルといった米国巨大テック企業の影響力が世界的に増大している。EUではアップルがアプリストアの開放を余儀なくされるなど、巨大テック企業への規制強化の動きが顕著化している。
米国でも、グーグルは検索エンジンと広告事業における独占的なアプローチを巡り、司法省から独占禁止法違反の可能性で圧力を受けている。この圧力に対抗するため、グーグルは事業の分割を検討しており、ChromeやAndroidを独立した企業として分離する可能性も浮上している。しかし、最も重要な変更点は広告収入に関する部分であり、競合他社との収益分配の拡大と広告処理の透明性向上を求められている。
さらに、AI分野におけるグーグルの力に対する懸念も高まっており、ユーザーがAI製品の使用をオプトアウトできる選択肢や、APIを通じてより多くのデータを共有する必要性が指摘されている。
グーグルはこれらの提案に反論しており、「司法省は、この訴訟の具体的な法的問題をはるかに超えた要求をしている」と主張している。
AIの進化に伴い、グーグル、マイクロソフト、OpenAIといった巨大テック企業のAI分野における影響力拡大も懸念されている。近年、マイクロソフトとOpenAIの5年間のパートナーシップに緊張が走っているとの報道が出ている。
OpenAIは財政難に苦しんでおり、マイクロソフトから十分な計算能力の提供を受けていないと感じているようだ。実際に、ChatGPTの最近の利用状況を見ると、需要に苦戦している様子がうかがえる。マイクロソフトはOpenAIに130億ドルを投資しているものの、OpenAIは2023年度も約50億ドルの損失を見込んでいる。OpenAIはさらなる資金と計算能力を必要としており、マイクロソフトとの関係に変化が生じている。
両社のパートナーシップにおいて特筆すべきは、OpenAIが汎用人工知能(AGI)を達成した場合、マイクロソフトとの契約を終了できるという条項が存在することだ。AGIは、機械の知能が人間の知能を超える段階、いわゆる「シンギュラリティ」を指す。この条項は、マイクロソフトがAGIを自社の目的のために利用することを防ぐために設けられたものであり、OpenAIのCEOがAGIの達成を宣言すれば発動される。
マイクロソフトは、OpenAIとのパートナーシップが何らかの形で失敗した場合に備え、独自のAIインフラストラクチャへの投資を強化する必要があると感じているようだ。その一環として、Inflectionから少なくとも6億5,000万ドルで従業員を引き抜き、共同創業者のムスタファ・スレイマンをマイクロソフトのAI事業の責任者に任命した。