核心概念
混合精度ニューラルネットワークを用いることで、デジタル予歪みの計算複雑度と消費電力を大幅に削減できる。
摘要
本論文では、ワイドバンド無線通信システムにおけるデジタル予歪み(DPD)の消費電力問題に取り組んでいる。DPDは信号品質を向上させるが、高い計算複雑度と大きなメモリ容量を必要とするため、消費電力が大きくなる課題がある。
提案手法では、ゲート付きリカレントニューラルネットワーク(GRU)ベースのDPDモデルにおいて、重みとアクティベーションを低精度の固定小数点演算に量子化することで、消費電力を大幅に削減している。具体的には、特徴抽出部分のみ32ビット浮動小数点演算を使用し、その他の演算を8ビット、12ビット、16ビットの固定小数点演算に置き換えている。
実験結果より、提案手法のW16A16-GRUモデルは、32ビット浮動小数点精度のDPDと同等の線形化性能を維持しつつ、7nmプロセスにおいて2.8倍の消費電力削減を実現できることが示された。さらに、W8A8モデルでは4.5倍の消費電力削減が可能であるが、線形化性能が若干劣化する。
本手法は、ワイドバンド無線通信システムにおける省電力なDPD実装に寄与するものと期待される。
統計資料
160 MHz帯域の4チャンネル×40 MHz 1024-QAM OFDM信号に対して、W16A16-GRUモデルは、ACPR -43.75/-45.27 dBc、EVM -38.72 dBを達成した。
W16A16-GRUモデルの7nmプロセスにおける消費電力は0.71 Wであり、32ビット浮動小数点精度のGRUモデルに比べて2.8倍の削減が可能である。
W8A8モデルでは、消費電力を4.5倍削減できるが、線形化性能がやや劣化し、ACPR -35.84/-35.70 dBc、EVM -28.89 dBとなる。
引述
"DPDの消費電力は、将来の5.5G/6GベースステーションやWi-Fi 7ルーターなどの電力制限のある環境での実用化を阻害する大きな障壁となっている。"
"提案手法は、算術演算とメモリアクセスのエネルギーを削減することで、DPDの消費電力を大幅に低減できる。"
"W16A16-GRUモデルは、32ビット浮動小数点精度のDPDと同等の線形化性能を維持しつつ、7nmプロセスにおいて2.8倍の消費電力削減を実現できる。"