核心概念
水生生態系への影響を最小限に抑えるため、ドローンから展開する低侵襲な底生環境モニタリングシステムとして、回転しながら降下する生分解性ロボット「タンブラーボット」を開発した。
摘要
論文情報
Romanello, L., Teboul, A., Wiesemüller, F., Nguyen, P. H., Kovac, M., & Armanini, S. F. (2024). TumblerBots: Tumbling Robotic sensors for Minimally-invasive Benthic Monitoring. arXiv preprint arXiv:2410.23049v1.
研究目的
本研究は、従来の底生環境モニタリング手法が水生生態系に及ぼす影響を軽減するため、ドローンを用いた低侵襲なモニタリングシステムの開発を目的とする。
手法
- ドローンから展開され、回転しながら水面に降下する生分解性ロボット「タンブラーボット」を設計・開発した。
- タンブラーボットには、水温・水圧センサー、GPSモジュール、浮力機構を備えたセンシングポッドを搭載した。
- 浮力機構は、クエン酸と重曹の化学反応によるガス発生を利用し、シリコン製の袋を膨張させることで実現した。
- 室内実験および湖での屋外実験を行い、タンブラーボットの降下速度、滑空比、風への耐性などを評価した。
結果
- タンブラーボットは、最大2 m/sの速度で回転しながら降下し、水生生物への影響を最小限に抑えることができた。
- センシングポッドは、水温・水圧データを収集し、浮力機構によって水面に浮上し回収することができた。
- タンブラーボットは、最大風速7.5 m/sの環境下でも安定した動作を示した。
結論
本研究で開発されたタンブラーボットは、従来手法と比較して、水生生態系への影響を大幅に低減できる、低侵襲な底生環境モニタリングシステムであることが示された。
意義
本研究は、環境モニタリングにおけるロボット工学の応用可能性を示すとともに、水生生態系の保全に貢献するものである。
今後の展望
- 複数のタンブラーボットによる群制御を行い、広範囲の環境モニタリングを行う。
- シリコン製のパーツを生分解性材料に置き換え、システム全体の環境負荷を低減する。
- 生分解性センサーを開発し、より持続可能なモニタリングシステムを実現する。
統計資料
地球の表面の71%は水で覆われている。
淡水環境は約10%の地球上の生物多様性を支えている。
1970年から2015年にかけて、世界の自然湿地は年平均-0.95%の割合で減少した。
2010年から2015年にかけて、湿地の減少率は-1.6%とほぼ倍増し、森林減少率(-0.24%、1990-2010年)の3倍の速さとなった。
開発したタンブラーボットの直径は40cmである。
センシングポッドの重量は約70gである。
タンブラーボットの降下速度は0.8 m/sから2 m/sの間である。
タンブラーボットの最大降下速度は約2.5 m/sである。
タンブラーボットの滑空比は0.5から1.5の間である。
120 g以上のペイロードを搭載した場合、タンブラーボットは回転降下できない。
化学反応により発生する最大圧力は164 kPaである。
水面に戻るために必要な体積増加は5.7%である。
システムの最大動作深度は約5mである。
使用したドローン(DJI F450)の重量は850g、ペイロードは450gである。
屋外実験時の風速は8~10ノット(4~5 m/s)、最大瞬間風速は15ノットであった。
引述
「これらの機能は、影響を受けやすいデータ収集を最小限の生態学的影響で実施する必要がある遠隔地や底生帯の探査にとって非常に重要である。」
「より安全で環境に優しいセンシングシステムの開発は、環境データ取得のためのより持続可能なアプローチを可能にする可能性がある。」