核心概念
イルカの柔軟性を模倣したバイオミメティックなソフトロボットイルカは、水中移動におけるエネルギー効率と機動性を向上させる可能性を秘めている。
摘要
拘束されない、多様な柔軟性設計を備えた水中移動のためのバイオミメティックロボットテンセグリティイルカ
書誌情報: Zhao, L., Jiang, Y., She, C.-Y., Jeong, M., Dong, H., Li, A. Q., Chen, M., & Balkcom, D. (2024). An Untethered Bioinspired Robotic Tensegrity Dolphin with Multi-Flexibility Design for Aquatic Locomotion. arXiv preprint arXiv:2411.00347v1.
研究目的: 本研究では、イルカの柔軟性を模倣した、拘束されないバイオミメティックロボットイルカの設計、開発、性能評価を行い、水中移動における柔軟性設計の有効性を検証することを目的とする。
方法:
バンドウイルカの解剖学的構造に基づき、柔軟な尻尾と剛性の高い頭部からなるロボットイルカを設計した。
柔軟な尻尾は、硬度調整可能なシリコンスキンで覆われた、ケーブル駆動式の魚骨状骨格構造を採用した。
異なる高さ比と厚さ比を持つ6種類の骨格を3Dプリントし、それぞれに同じシリコン製イルカの尻尾を取り付けて遊泳試験を実施した。
水中カメラを用いてロボットの動きを撮影し、速度、ボディレングスあたりの速度、輸送コスト(COT)を測定して性能を評価した。
主な結果:
高さ比1:2、厚さ比1:1の骨格タイプ4が、163.18 mm/sの最高速度と95の最低COTを達成し、試験した構成の中で最も優れたエネルギー効率を示した。
高さ比1:1(低い尾の高さ)の骨格タイプ1、2、3は、125.40 mm/sから133.56 mm/sの中程度の速度と、約136のCOT値を示した。
高さ比1:2だが厚さ比が2:1と3:1の骨格タイプ5と6は、それぞれ最も遅い遊泳速度と最も高いCOT値(175と193)を示した。
結論:
柔軟な尻尾と調整可能な骨格構造を組み合わせることで、イルカのような動きを模倣し、水中移動のエネルギー効率を向上させることができる。
適切な高さ比と厚さ比の骨格設計を選択することで、水中探査、海洋調査、その他の水中用途向けに性能を最適化できる。
意義: 本研究は、エネルギー効率の高い水中ロボットシステムの開発に貢献し、カスタマイズされた骨格設計がロボット遊泳のエネルギー効率に与える影響を明らかにした。
限界と今後の研究:
今後の研究では、構造パラメータのさらなる調整、追加の比率のテスト、適応型骨格設計の探求を行い、多様な水中環境における汎用性を向上させる予定である。
また、制御された旋回と機動性の向上、リアルタイムの視覚フィードバックと環境認識のためのカメラの搭載、正確なナビゲーションのための操舵機構と浮力制御システムの追加を目指している。
統計資料
ロボットイルカの頭部は全長のおよそ33%を占め、残りの67%は尻尾で構成されている。
イルカの尻尾は、硬度10Aのシリコンで成形されている。
6種類の異なる骨格タイプを3Dプリントし、それぞれに高さ比(h1:h2)と厚さ比という2つのパラメータを設定した。
骨格タイプ4は、高さ比1:2、厚さ比1:1で、最高速度163.18 mm/s、最低COT95を達成した。
骨格タイプ5と6は、高さ比1:2だが、厚さ比がそれぞれ2:1と3:1と大きいため、最も遅い遊泳速度と最も高いCOT値(175と193)を示した。