本論文では、ランダム対称行列を入力とする一般的な一次反復アルゴリズムを分析するための新しい手法としてダイアグラムを提案している。
まず、ダイアグラムの定義と基本的な性質を示す。ダイアグラムは、入力行列Aの対称多項式を表す小さなグラフである。ダイアグラムの集合は、Aの対称関数に対する直交基底を成す。
次に、定数回の反復に対して、ダイアグラム展開の漸近的性質を明らかにする。特に、木状のダイアグラムのみが漸近的に支配的であり、それらが漸近的に独立なガウス変数の基底を成すことを示す。この性質は、信念伝播アルゴリズムとAMPアルゴリズムの等価性や状態遷移式の導出に応用できる。
さらに、多項式回数の反復に対しても、木状ダイアグラムの近似が一定の範囲で成り立つことを示す。具体的には、デバイアスド累乗反復に対して、木状ダイアグラムの近似が√n回の反復まで成り立つことを証明する。
全体として、ダイアグラム表現を用いることで、反復アルゴリズムの漸近的振る舞いを組合せ論的に明らかにできることが示された。この手法は、物理学で用いられてきた非可換な方法を厳密に扱うことができる点で特徴的である。
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