核心概念
本稿では、マイクロスケール独立型単結晶複合酸化物デバイスアレイを作製するための、ウェットケミカルエッチングベースの微細加工プロセスとエピタキシャルリフトオフを組み合わせた汎用的な作製戦略を提示する。
摘要
本稿は、マイクロスケール独立型単結晶複合酸化物デバイスアレイを作製するための新しい戦略を提案する研究論文である。
研究目的:
本研究は、従来の酸化物薄膜作製技術では困難であった、独立型単結晶複合酸化物デバイスアレイを作製し、任意の基板へのヘテロ集積を実現することを目的とする。
方法:
本研究では、モデル系としてリラクサー強誘電体である0.5Ba(Zr0.2Ti0.8)O3-0.5Ba(Zr0.7Ti0.3)O3 (BCZT)を用い、SrRuO3 (SRO)を上下電極、La0.7Sr0.3MnO3 (LSMO)を犠牲層として用いた。まず、成長基板上にSRO/BCZT/SRO強誘電体キャパシタのメサアレイをフォトリソグラフィーとウェットケミカルエッチングにより作製した。次に、リフトオフ用のエッチングホールをデバイス周辺に設け、LSMO犠牲層をエッチングすることでデバイスアレイを基板から剥離した。最後に、剥離したデバイスアレイをガラス基板上に転写し、ヘテロ集積を実現した。
主な結果:
- ウェットケミカルエッチングとエピタキシャルリフトオフを組み合わせることで、マイクロスケール独立型単結晶複合酸化物デバイスアレイを作製できることを実証した。
- エッチングホールをデバイス周辺に設けることで、エッチング液の供給を制御し、デバイスへのダメージを最小限に抑えながら、効率的なリフトオフを実現した。
- 剥離したデバイスアレイをガラス基板上に転写し、ヘテロ集積を実現した。
結論:
本研究で提案した戦略は、様々なマイクロスケール独立型単結晶複合酸化物デバイスアレイを作製するための汎用的な方法を提供するものであり、複合酸化物デバイスの応用範囲を大きく広げることが期待される。
意義:
本研究は、従来の酸化物薄膜作製技術では困難であった、独立型単結晶複合酸化物デバイスアレイを作製するための新しい戦略を提示するものであり、フレキシブルエレクトロニクス、高誘電率ゲート絶縁膜、極限歪み変調など、様々な分野への応用が期待される。
限界と今後の研究:
- 現状では、転写後のデバイスアレイの電気的特性評価が課題として残されている。
- デバイスアレイの電気的接続やパッケージング技術の開発が必要である。
- より複雑な構造や多層構造のデバイスアレイを作製するためのプロセス開発が必要である。
統計資料
10 x 10 のBCZT MIMキャパシタアレイを作製した。
各キャパシタのサイズは約100 x 100 µm2 である。
デバイスのリフトオフには、約200 µmの横方向のエッチングに3~4時間を要した。
エッチングホールを用いたリフトオフにより、97/100という高い歩留まり(目に見える膜の亀裂がない)を達成した。
引述
"Our strategy, when combined with appropriate etching protocols, is generally applicable for fabricating many other micro-scale freestanding complex oxide devices or device arrays, which adds more exciting possibilities to the current oxide membrane research."