核心概念
ペルーの鉱業ブーム期における分析から、地方自治体の行政能力の高さが、資源収入を経済発展に繋げる鍵となる一方、行政能力の低い地域では社会不安を増大させる可能性が示唆された。
摘要
ペルーにおける鉱業ブームと地方自治体の役割:資源の呪いか、それとも発展の鍵か?
本稿は、2004年から2011年にかけてペルーで起こった鉱業ブームを事例に、地方自治体の行政能力が、資源収入の経済効果に与える影響を検証した研究論文である。
本研究は、天然資源が経済成長に及ぼす影響は、地方自治体の行政能力によって異なるのかを検証することを目的とする。具体的には、行政能力の高い地域では資源収入が有効に活用され経済発展につながる一方、行政能力の低い地域では資源収入が有効に活用されず、経済発展を阻害する「資源の呪い」をもたらす可能性を検証する。
ペルーは、鉱業が盛んな地域とそうでない地域が国内に混在しているため、資源ブームの影響を分析する上で理想的な事例を提供している。本研究では、ペルーの地方自治体レベルのデータを用い、鉱業ブーム以前 (1997-2003年) の一人当たり税収を地方自治体の行政能力の指標として使用し、鉱業ブーム期 (2004-2011年) における資源収入と経済発展の関係を、行政能力の高低によって比較分析している。
分析手法としては、差の差分法を用い、鉱業ブームによる資源収入の増加が、行政能力の高い地域と低い地域で、経済発展に与える影響を比較している。さらに、鉱業ブーム以前の鉱物埋蔵量データを用いることで、資源収入の発生源となる鉱山の立地が、経済発展の可能性を考慮して決定されている可能性、すなわち、資源収入の発生が内生的に決定されている可能性を排除している。