核心概念
新規経口薬ムバラプリンは、 Lp(a) を効果的に低下させることが示されたが、心血管疾患リスクへの影響についてはさらなる研究が必要である。
摘要
ムバラプリンのKRAKEN試験
本稿は、2024年のアメリカ心臓協会(AHA)で発表された、新規経口薬ムバラプリンの第2相臨床試験(KRAKEN試験)の結果を報告する記事である。
Lp(a) とその問題点
- リポ蛋白質(a) (Lp(a)) は、遺伝的に決定されるコレステロールの一種であり、生涯にわたってその値はほぼ一定である。
- Lp(a) が高値(125 nmol/L 以上)になると、血栓や炎症のリスクが高まり、心臓発作、脳卒中、大動脈弁狭窄症、末梢動脈疾患のリスクが大幅に増加する。
- 人口の約20%、特にアフリカ系黒人や南アジア系の人々に影響を与えている。
- Lp(a) を低下させる承認薬は現在存在しない。
ムバラプリンの作用機序
- ムバラプリンは、Lp(a) 粒子の2つの部分を結合を阻害することで、Lp(a) 値を低下させる経口薬である。
KRAKEN試験の概要
- Lp(a) 値が非常に高い(> 175 nmol/L)成人233人を対象に、ムバラプリン10mg、60mg、240mgのいずれか、またはプラセボを12週間毎日投与した。
- Lp(a) 値は、従来の血液検査と、血中のインタクトなLp(a) 粒子のみを測定する新しい検査を用いて測定した。
KRAKEN試験の結果
- ムバラプリン群では、プラセボ群と比較して、従来の血液検査で最大70.0%、新しい検査で最大85.5%、Lp(a) 値が低下した。
- 従来の血液検査では約82%、新しい検査では97%の参加者が、Lp(a) 値125 nmol/L未満を達成した。
- 60mgまたは240mgのムバラプリンを投与された患者では、Lp(a) 値の低下は同程度であり、10mg群よりも大きな低下が見られた。
- ムバラプリンは安全で、おおむね忍容性は良好であった。
専門家の見解
- 豪モナシュ大学ビクトリア心臓研究所所長のStephen Nicholls氏は、「これは非常に心強い第2相試験の結果であり、この薬剤の開発を継続する励みになる」と述べている。
- 米ジョンズ・ホプキンス大学医学部の心臓専門医であるErin Michos氏は、「ムバラプリンは、これまで治療法のなかった疾患に対する非常に有望なアプローチである」と述べている。
今後の展望
- Lp(a) 値の低下が心血管疾患の発症率低下につながるかどうかを判断するため、より大規模で長期的な研究が必要である。
統計資料
Lp(a) が高値(125 nmol/L 以上)になると、心臓発作、脳卒中、大動脈弁狭窄症、末梢動脈疾患のリスクが大幅に増加する。
人口の約20%、特にアフリカ系黒人や南アジア系の人々に影響を与えている。
ムバラプリン群では、プラセボ群と比較して、従来の血液検査で最大70.0%、新しい検査で最大85.5%、Lp(a) 値が低下した。
従来の血液検査では約82%、新しい検査では97%の参加者が、Lp(a) 値125 nmol/L未満を達成した。
引述
“This is a very reassuring phase 2 result,”
“It encourages the ongoing development of this agent.”
“a highly promising approach to treat a previously untreatable disorder,”
“While muvalaplin appears to be an effective approach to lowering Lp(a) levels, we still need to study whether Lp(a) lowering will result in fewer heart attacks and strokes,”