核心概念
鉄酸化物ナノクラスター(Fe2O3)nの触媒活性を系統的に調査し、アンモニア分解反応における最適なクラスターサイズを明らかにした。
摘要
本研究では、密度汎関数理論(DFT)に基づいて、アンモニア分解反応における(Fe2O3)nクラスター(n=1-4)の触媒活性を系統的に調査した。主な知見は以下の通り:
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アンモニアの吸着自由エネルギーは、クラスターサイズの増加に伴い n=3まで減少し、その後n=4で若干増加する。最も安定なアンモニア吸着は、二配位鉄サイトを持つFe2O3クラスターで観察された。
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アンモニア分解反応の律速段階は、クラスターサイズに依存し、n=1-3ではNH*⇌N*+3H*反応が律速となる。
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部分的なアンモニア分解後のH2生成が、完全分解後のH2生成よりも有利である。
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H2生成の律速段階は、触媒構造によって大きく異なり、キト型Fe2O3では部分分解後のH2生成が、一次型Fe2O3では完全分解後のH2生成が有利である。
以上の知見は、アンモニアからの水素生産に適したナノ触媒設計の指針となる。
統計資料
アンモニア吸着自由エネルギー:
-33.68 kcal/mol (Fe2O3)
-30.97 kcal/mol ((Fe2O3)2)
-30.36 kcal/mol ((Fe2O3)3)
-30.59 kcal/mol ((Fe2O3)4)
アンモニア分解反応の律速段階の活性化エネルギー:
46.98 kcal/mol (Fe2O3, 反応(10))
34.51 kcal/mol (Fe2O3, 反応(9))
35.97 kcal/mol ((Fe2O3)3, 反応(9))
43.96 kcal/mol ((Fe2O3)4, 反応(9))
H2生成反応の活性化エネルギー:
91.1 kcal/mol ((Fe2O3)2, 反応(11))
100.74 kcal/mol ((Fe2O3)3, 反応(11))
引述
"アンモニア吸着エネルギーは、クラスターサイズの増加に伴い n=3まで減少し、その後n=4で若干増加する。"
"アンモニア分解反応の律速段階はクラスターサイズに依存し、n=1-3ではNH*⇌N*+3H*反応が律速となる。"
"部分的なアンモニア分解後のH2生成が、完全分解後のH2生成よりも有利である。"