核心概念
大規模言語モデル(LLM)は、悪意のあるプロンプトを一見無害なプロンプトのシーケンスに埋め込むことで、安全対策を回避するように操作できるという脆弱性を抱えている。
摘要
SequentialBreak: 逐次プロンプトチェーンを用いた大規模言語モデルへの攻撃
書誌情報: Bijoy Ahmed Saiem, MD Sadik Hossain Shanto, Rakib Ahsan, Md Rafi ur Rashid. (2024). SequentialBreak: Large Language Models Can be Fooled by Embedding Jailbreak Prompts into Sequential Prompt Chains. arXiv preprint arXiv:2411.06426v1.
研究目的: 本研究は、大規模言語モデル (LLM) の安全対策を回避するために、悪意のあるプロンプトを逐次的なプロンプトチェーンに埋め込む攻撃手法である「SequentialBreak」を提案し、その有効性を検証することを目的とする。
手法:
攻撃者は、LLMに対して無害に見える質問群や会話、ゲームのシナリオなどのテンプレートを作成する。
そのテンプレート内の特定のプロンプトを、悪意のあるプロンプトに置き換える。
置き換えられたプロンプトを含むテンプレートをLLMに入力し、LLMが有害な回答を生成するかどうかを評価する。
主な結果:
SequentialBreakは、オープンソースおよびクローズドソースの複数のLLM (Llama-2, Llama-3, Gemma-2, Vicuna, GPT-3.5, GPT-4o) に対して高い攻撃成功率を示した。
3つの異なるシナリオ (質問バンク、会話補完、ゲーム環境) での実験により、SequentialBreakは多様なプロンプト構造に適応できることが示された。
SequentialBreakは、既存の防御メカニズム (OpenAI Moderation API, Perplexity Filter, SmoothLLM) を回避できることが確認された。
結論: SequentialBreakは、LLMの安全対策における重要な脆弱性を明らかにした。LLMは、逐次的な入力に対して、個々のプロンプトに対する注意が薄れる可能性があり、悪意のあるプロンプトを見落とす可能性がある。
意義: 本研究は、LLMの安全性と信頼性に関する重要な問題提起を行うものである。LLMの開発者は、SequentialBreakのような攻撃を防ぐために、より堅牢な安全対策を講じる必要がある。
制限と今後の研究:
本研究では、限られた数のLLMと攻撃シナリオを用いて評価を行った。今後、より多くのLLMやシナリオを用いて評価を行う必要がある。
SequentialBreakの攻撃成功率は、LLMのアーキテクチャや学習データによって異なる可能性がある。
今後、SequentialBreakのような攻撃を防ぐための、より効果的な防御メカニズムの開発が期待される。
統計資料
JailbreakBenchデータセットを使用して、攻撃のパフォーマンスを評価しました。このデータセットには、OpenAIの使用ポリシーに対応する10の幅広いカテゴリに分類された100の動作が含まれています。
攻撃の成功率は、オープンソースモデル(Llama-2、Llama-3、Gemma-2、Vicuna)とクローズドソースモデル(GPT-3.5、GPT-4o)を含む複数の主要なLLMに対して評価されました。
3つの異なる攻撃シナリオ(質問バンク、会話補完、ゲーム環境)が設計され、それぞれに2つの異なるテンプレートが作成されました。
攻撃の有効性を評価するために、Llama3-70BとGPT-4の両方を判定モデルとして使用しました。
SequentialBreakの有効性は、3つの最先端のJailbreak防御メカニズム、OpenAI Moderation API、Perplexity Filter、SmoothLLMと比較して評価されました。