本稿は、メカニズムデザインにおけるマキシミンアプローチの新たな展開として、「ロバストなロバスト性」という概念を導入し、その理論的基礎と応用例、そして行動学的基礎づけを提示した論文です。
従来のマキシミンアプローチでは、曖昧性集合と呼ばれる事前分布の集合に対して、最悪ケースの期待ペイオフを保証するメカニズムを最適としていました。しかし、現実には曖昧性集合自体も誤って特定されている可能性があり、曖昧性集合の近傍にある事前分布に対してペイオフ保証が大きく変動する可能性がありました。
本稿では、曖昧性集合外の近傍にある事前分布に対してもペイオフ保証が大きく変動しない「ロバストなロバスト性」の概念を導入することで、この問題に対処しています。
本稿では、連続モーメント集合やワッサースタイン距離に基づく球のような、広く用いられる曖昧性集合が「ロバストなロバスト性」を満たすことを示しています。一方、相対エントロピーや総変動距離に基づく球、単一の事前分布、サポート、分位点、周辺分布に制約を課すことで定義される曖昧性集合は、「ロバストなロバスト性」を満たさないことを示しています。
本稿では、意思決定理論の枠組みの中で、「ロバストなロバスト性」の行動学的基礎づけを与えています。具体的には、閉集合である曖昧性集合に対するペイオフ保証がロバストであることと、関連する選好関係がある連続性を満たすことが同値であることを示しています。
本稿は、メカニズムデザインにおけるマキシミンアプローチの新たな展開として、「ロバストなロバスト性」という概念を導入し、その理論的基礎と応用例、そして行動学的基礎づけを提示した点で意義があります。
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