核心概念
ベクトルチャーモニウムとボトモニウムの不可視崩壊は、クォークの質量スケールでの弱い混合角の測定を可能にし、標準模型を超えた物理の兆候を提供する可能性があります。
本論文は、標準模型(SM)とその拡張モデルの枠組みの中で、ベクトルチャーモニウム状態(J/ψ、ψ'、Υ(nS))のニュートリノ対への崩壊について考察しています。
導入
チャーモニウム状態J/ψの発見は、チャームクォークの存在を示唆しました。
その後、ボトムクォークと反ボトムクォークの束縛状態であるΥ中間子が発見されました。
これらのベクトルクォークオニウム状態(VQ)とその励起状態の崩壊過程は、フレーバーファクトリー、主にベクトルクォークオニウム共鳴の質量に調整できる電子-陽電子衝突型加速器で測定されてきました。
クォークオニウムは主にハドロンチャンネルに崩壊しますが、レプトン対への崩壊も数%のレベルで起こり、より高い精度で測定することができます。
研究の動機
本論文では、JPC = 1−−のクォークオニウム状態、すなわちそれらの弱いVQ→νν̄崩壊の不可視崩壊幅の計算に焦点を当てています。
特に、弱い混合角(sin^2 θW(μ))が不可視崩壊幅に与える影響を調べ、非標準的なニュートリノ相互作用も考慮して解析を拡張しています。
クォークオニウムの質量スケールでの弱い混合角の決定は、不可視崩壊幅を高精度で測定できれば実現可能であることを示唆しています。
解析
ベクトルクォークオニウムの崩壊は、クォークの弱いベクトル結合に依存する崩壊幅を持つため、クォークオニウムの質量スケールでの弱い混合角を測定する機会を提供します。
ニュートリノが非標準的な中性カレント結合を持つ場合、原理的にはニュートリノの性質を区別するのに役立つ可能性があります。
本論文では、ディラック粒子とマヨラナ粒子の両方を考慮し、標準模型(SM)とその拡張モデルの枠組みの中で、ベクトルクォークオニウム状態(J/ψ、ψ'、Υ(nS))のニュートリノ対への崩壊の分岐比を計算しています。
結果
チャーモニウムの不可視崩壊幅は、荷電レプトンへの崩壊と比較して約6桁も抑制されています。
一方、ボトモニウムの不可視崩壊幅は、電子-陽電子対への崩壊と比較してわずか3桁小さいだけです。
これは、主に式(8)におけるクォークオニウムの質量依存性によるものです。
Υ(1S)(およびJ/ψ)の不可視崩壊は10^-5(10^-8)レベルで起こると予測されており、これはBelle-II(BES-III)のような現在の電子-陽電子衝突型加速器の到達範囲内にあると考えられます。
これらのスケールでの弱い混合角の有意な決定には、数パーセントの精度での測定が必要となります。
結論
クォークオニウム状態の特異なベクトル的特徴は、チャーモニウムとボトモニウム状態の質量スケールでの弱い混合角の測定に適しています。
不可視崩壊の分岐比は、主に弱いベクトル結合に依存する標準模型の明確な予測です。
クォークオニウムの不可視崩壊幅は、ニュートリノの性質を調べるのにも役立ちます。
ニュートリノに対するZボソンのベクトル結合と軸結合を異なる方法で変更する、非標準的なニュートリノ相互作用が存在する場合、ディラックニュートリノとマヨラナニュートリノの崩壊確率に違いが現れ、ディラック-マヨラナ混同定理を回避することができます。
SMを超えた新しい物理が存在する場合、Υ(1S)とJ/ψの崩壊においてディラックニュートリノとマヨラナニュートリノを区別することは有望に見えますが、その不可視崩壊幅を非常に高い精度で測定する必要があります。
統計資料
チャーモニウムの不可視崩壊幅は、荷電レプトンへの崩壊と比較して約6桁も抑制されています。
ボトモニウムの不可視崩壊幅は、電子-陽電子対への崩壊と比較してわずか3桁小さいだけです。
Υ(1S)(およびJ/ψ)の不可視崩壊は10^-5(10^-8)レベルで起こると予測されています。