Основні поняття
人間の意思決定における超利他主義的な傾向は、文脈特異的であり、損失の状況では減少するが、オキシトシンはこの影響を緩和し、他者を害するという認識を高めることで、損失の状況でも超利他主義を回復させる。
研究の概要
本研究は、人間の道徳的意思決定における「超利他主義」、すなわち、自己犠牲を払ってでも他者の苦しみを軽減しようとする傾向について探求しています。先行研究では、人々は自身の痛みよりも他者の痛みを軽減するためにお金を払うことをいとわないという、超利他主義的な選好を示唆する結果が得られています。しかし、この超利他主義的な行動の背後にあるメカニズムや、それがどのような状況下で変化するのかは、まだ十分に解明されていません。
研究の目的
本研究では、2つの実験を通じて以下の点を検証しました。
意思決定の文脈(金銭的利得 vs. 損失)が、人々の超利他主義的な選好にどのような影響を与えるのか。
オキシトシンが、文脈による超利他主義の変化に影響を与えるのか。
超利他主義的な選好と、道徳心理学における重要な概念である「道具的危害(IH)」との関連性。
実験方法
実験1
参加者80名(男性40名)を対象に、金銭と電気ショックのトレードオフ課題を行いました。参加者は、金銭的利得を得る(または損失を回避する)ために、自分自身または他者に、より強い痛み(電気ショック)を与えるかを選択しました。この実験では、意思決定の文脈(利得 vs. 損失)と電気ショックを受ける対象(自分 vs. 他者)の2要因を操作しました。
実験2
参加者46名(男性のみ)を対象に、実験1と同様の課題を行いました。この実験では、実験1の2要因に加えて、オキシトシンまたはプラセボ(生理食塩水)の鼻腔内投与(24IU)を行いました。参加者は、2つのセッション(オキシトシン vs. プラセボ)に参加し、セッション間隔は5~7日間としました。
結果
実験1
利得の文脈では、参加者は自分自身よりも他者の痛みを軽減するために行動する傾向があり、超利他主義的な選好を示しました。
しかし、損失の文脈では、この超利他主義的な選好は見られなくなりました。
参加者のIHの程度が高いほど、超利他主義的な選好は弱くなる傾向がありました。
実験2
プラセボセッションでは、実験1と同様の結果が得られました。
オキシトシンを投与すると、損失の文脈においても超利他主義的な選好が見られるようになりました。
オキシトシンは、参加者が課題を「他者を害すること」と捉える傾向を高め、このことが損失の文脈における超利他主義の回復に寄与している可能性が示唆されました。
考察
これらの結果から、人間の超利他主義的な行動は文脈に依存し、損失の状況では減少することが示されました。オキシトシンは、この文脈による影響を緩和し、他者を害するという認識を高めることで、損失の状況でも超利他主義を回復させる可能性があります。
本研究は、超利他主義の基盤となる心理的および神経生物学的メカニズムの理解に貢献するものであり、オキシトシンが道徳的意思決定において重要な役割を果たしていることを示唆しています。