本論文では、並列スペクトル遅延修正法(pSDC)の並列性能を調査している。pSDCは、初期値問題の数値解法に対して小規模並列性を提供する手法である。本研究では、浅水方程式への適用と、ICON-Oおよび SWEETという2つの確立されたシミュレーションコードにおける並列実装を示している。
ICON-Oは、オペレーショナルな海洋モデルであり、既存の時間積分手法であるアダムス・バッシュフォード2次法(AB)と比較して、pSDCは中から高精度の範囲で高速な時間解法を実現できることを示している。一方、SWEETは研究用コードであり、陰陽分離型の2次精度IMEX法と比較して、pSDCは低から中精度の範囲で高速化が可能であることを示している。
並列性能の評価では、OpenMPによる共有メモリ並列化を行っている。ICON-Oでは、pSDCの時間並列化と空間並列化を組み合わせた入れ子並列化により、最大10倍の高速化を達成している。一方、SWEETでは、時間並列化と空間並列化の性能差は小さく、最大で256倍の高速化を示している。これは、SWEETの空間離散化がpSDCの並列性能に大きな影響を与えないためと考えられる。
全体として、本研究では、pSDCがオペレーショナルモデルとリサーチコードの両方において、中から高精度の範囲で高速な時間積分を実現できることを示している。今後の課題として、MPI並列化との組み合わせによる大規模並列化や、IMEX型pSDCの最適化などが挙げられる。
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