グリーゼ229Bは、メタン吸収の特徴を持つ初の褐色矮星として発見されて以来、天文学者たちの注目を集めてきた。しかし、その質量と光度の関係は、既存の恒星進化モデルと矛盾しており、大きな謎とされてきた。
本研究では、超大型望遠鏡干渉計(VLTI)のGRAVITYと、同じく超大型望遠鏡に搭載された高分散分光器CRIRES+を用いて、グリーゼ229Bの詳細な観測を行った。その結果、グリーゼ229Bは単一の天体ではなく、グリーゼ229Baとグリーゼ229Bbからなる近接連星系であることが明らかになった。
GRAVITYによる観測では、2つの天体の位置を正確に測定することに成功し、その軌道周期が約12.1日、軌道長半径が約0.042天文単位であることが判明した。また、CRIRES+による分光観測では、2つの天体のスペクトルを分離して観測することに成功し、それぞれの視線速度の変化から、質量比が約0.9であることが明らかになった。
これらの観測結果と最新の恒星進化モデルを組み合わせることで、グリーゼ229Baとグリーゼ229Bbの質量はそれぞれ約38.1木星質量と約34.4木星質量、年齢は約2.45億年と推定された。
今回の発見は、グリーゼ229Bの質量と光度の矛盾を解消するだけでなく、他の褐色矮星の観測結果の解釈にも影響を与える可能性がある。また、恒星に近い軌道を回る近接連星系の形成過程や、褐色矮星連星の出現頻度など、今後の研究課題としても重要な意味を持つ。
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