本論文では、チップ間ワイヤレスネットワークにおける通信の課題である高遅延伝搬と共チャネル干渉を解決するために、時間逆転技術の適用を提案している。
まず、4チップレットからなるインターポーザ構造を対象に、時間逆転を用いた単一リンクおよび複数リンクの通信を検討した。その結果、時間逆転を用いることで、単一リンクでは50 Gb/sの高速通信が可能となり、3つの同時リンクでも100 Gb/sを超える集約データレートを達成できることを示した。
次に、動作周波数や構造の変化に対する時間逆転の頑健性を評価した。周波数を140 GHzから170 GHz、200 GHzへと変化させても、時間逆転の効果は安定して得られることを確認した。また、チップレットの数を4から16に増やした場合でも、時間逆転による通信性能の向上が確認できた。
最後に、時間逆転フィルタの実装可能性を検討するため、サンプリング周波数を低減した場合の性能劣化を評価した。サンプリング周波数を80 GHzまで下げても、データレートは30 Gb/sを維持できることが分かった。これにより、時間逆転を用いたチップ間ワイヤレス通信の実現可能性が示された。
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