本論文は、対称群 Sn の既約指標の値について、その上限が置換のサイクル構造、特にサイクルの数によってどのように決定されるかを論じたものです。主結果として、サイクルの数が k 個であるような置換における既約指標の値は、k! を上限として持つことが示されました。
定理1: 対称群 Sn の既約指標 χ と、k 個のサイクルに分解される元 g ∈ Sn (ここで、1-サイクルも含む) に対し、|χ(g)| ≤ k! が成り立つ。この上限は、k を固定し、n, χ, g を変化させたとき、最適な値となる。
定理2: 任意の k ≥ 1 に対し、n, g ∈ Sn, Sn の既約指標 χ であって、g が {1, ..., n} を k 個の軌道に分割し、|χ(g)| = k! を満たすものが存在する。
定理3: g が少なくとも1つの不動点を持つ場合、|χ(g)| ≤ (k-1)! が成り立つ。この上限は、g が k 個の軌道(少なくとも1つはサイズ1)を持つ場合に最適となる。
これらの結果を用いることで、SLn(q) のユニポテント指標の値に対して、正則半単純元における最適な上限を得ることができます。
論文では、Murnaghan-Nakayama ルールと Young 図形におけるリムフックの概念を用いて、指標の値を評価することで上記の結果を証明しています。特に、リムフックの長さと個数の関係、およびリムフックの形状と指標の値の関係を巧みに利用することで、シャープな上限を導出しています。
本論文は、対称群の表現論における基本的な問題に取り組み、指標の値に関する深い結果を得ています。その結果は、有限群の表現論、特に有限線形群の表現論において広く応用される可能性があります。
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