Kernekoncepter
腸内細菌由来の炎症から肝臓を保護するために、門脈域に存在する特殊なマクロファージが重要な役割を果たしている。
Resumé
この研究では、肝臓の免疫システムにおける領域特異性に着目した。肝臓の門脈域と中心静脈域では、炎症反応の抑制が観察された。単一細胞トランスクリプトーム解析により、門脈域に特異的に存在する免疫抑制性マクロファージが同定された。これらのマクロファージは、IL-10の高発現とマクロファージスカベンジャー受容体Marco の発現により、炎症を抑制していることが明らかになった。
Marcoの発現誘導には腸内細菌叢が重要であり、特にOdobacteraceae科の細菌が産生するイソアロリトコール酸が、この免疫抑制性マクロファージの分化を促進することが示された。腸管バリア機能の破綻により、門脈域の炎症が亢進し、Marcoの欠損により著しく増悪した。
一方、原発性硬化性胆管炎や非アルコール性脂肪肝炎などの慢性肝炎では、Marco陽性マクロファージの減少が観察された。動物実験モデルでは、Marco陽性マクロファージの機能的除去により、これらの肝炎様の病態が再現された。
以上より、腸内細菌は門脈域のMarco陽性免疫抑制性マクロファージを誘導し、肝臓への過剰な炎症を抑制することが明らかになった。この自己制御システムの破綻が、原発性硬化性胆管炎や非アルコール性脂肪肝炎などの慢性肝炎の発症に関与すると考えられる。
Statistik
肝臓の門脈域と中心静脈域では、炎症反応の抑制が観察された。
Marco陽性免疫抑制性マクロファージは門脈域に特異的に存在する。
Marcoの発現誘導にはOdobacteraceae科の細菌が産生するイソアロリトコール酸が重要である。
原発性硬化性胆管炎や非アルコール性脂肪肝炎では、Marco陽性マクロファージの減少が観察された。
Citater
「腸内細菌は門脈域のMarco陽性免疫抑制性マクロファージを誘導し、肝臓への過剰な炎症を抑制する」
「この自己制御システムの破綻が、原発性硬化性胆管炎や非アルコール性脂肪肝炎などの慢性肝炎の発症に関与する」