Conceptos Básicos
ユーロ圏とその主要加盟国の経済データを網羅した新しい大規模データセット「EA-MD-QD」を用いて、共通金融政策ショックに対する国別反応の非対称性を分析した結果、コア国と周辺国間で、特に失業率の反応に大きな違いが見られることが明らかになった。
論文タイトル: ユーロ圏とその加盟国における大規模データセットと共通金融政策の動学的影響
研究目的: 本論文は、ユーロ圏とその主要加盟国(オーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、オランダ、ポルトガル、スペイン)の経済データを網羅した新しい大規模データセット「EA-MD-QD」を構築し、公開することを目的とする。さらに、このデータセットを用いて、共通金融政策ショックが各国に与える影響の非対称性を分析する。
手法: データセットは、ユーロスタット、欧州中央銀行(ECB)、経済協力開発機構(OECD)、FREDなどの公的機関から収集された、2000年から最新月までの四半期および月次データで構成されている。データの処理には、季節調整、欠損値の補完、外れ値処理などが行われている。分析には、共通要素ベクトル自己回帰モデル(CC-VAR)を用い、共通金融政策ショックの識別には、月次データには高頻度プロキシSVAR、四半期データには符号制約を用いている。
主要な結果:
データセット分析の結果、ユーロ圏全体の産出量と物価水準の変動には大きな違いが見られることが明らかになった。産出量の変動は、物価水準の変動よりも共通のユーロ圏全体の要因に大きく影響を受けており、これは実体経済変数の方が名目変数よりもユーロ圏の景気循環との同期性が高いことを示唆している。
共通金融政策ショックに対する国別反応は、名目変数に比べて実体経済変数でばらつきが大きかった。特に、失業率の反応は国によって大きく異なり、コア国と周辺国間で顕著な違いが見られた。
インフレ率の変動は、産出量と比較して、国固有の要因に大きく影響されることが明らかになった。これは、欧州中央銀行(ECB)が金融政策決定を主にユーロ圏全体のインフレデータに基づいて行っているため、インフレ率が共通のユーロ圏全体の要因にあまり依存しない国では、景気循環と乖離した政策措置がとられる可能性があることを示唆している。
結論:
本論文で構築・公開されたEA-MD-QDデータセットは、ユーロ圏の経済分析や政策分析を行う上で重要なリソースとなる。また、共通金融政策ショックに対する国別反応の非対称性を明らかにしたことは、ユーロ圏における金融政策の伝達メカニズムを理解する上で重要な示唆を与えるものである。
Estadísticas
データセット「EA-MD-QD」には、ユーロ圏全体と10の主要加盟国の四半期および月次のマクロ経済時系列データが含まれている。
データセットには、800を超える時系列データが含まれており、2000年1月から最新月までを網羅している。
2024年1月以降、EA-MD-QDは毎月更新され、常に改訂されている。
月次データの分析期間は2000年2月から2024年1月(T = 288)。
四半期データの分析期間は2000年第2四半期から2023年第4四半期(T = 95)。
月次データでは6つの共通要素、四半期データでは7つの共通要素を抽出。
月次データのVARモデルとCC-VARモデルでは、ラグは8期。
四半期データのVARモデルとCC-VARモデルでは、ラグは2期。
符号制約を用いた分析では、10,000回のブートストラップ複製を使用。