Core Concepts
鉄筋コンクリートの腐食誘発クラックの発生メカニズムは、腐食生成物の組成と密度の変化によって説明できる。
Abstract
本論文は、鉄筋コンクリートの腐食誘発クラックの発生メカニズムを解明することを目的としている。
まず、鉄筋表面から溶出したFe2+イオンおよびFe3+イオンの反応輸送と沈殿について、密度の異なる酸化鉄と水酸化鉄の生成比率が腐食電流密度に依存することを考慮したモデルを提案した。
次に、この腐食生成物の蓄積による鉄筋周辺のコンクリートへの圧力発生と、それによるコンクリートのき裂進展をPhase-field法を用いてモデル化した。
さらに、加速腐食試験における腐食電流密度の影響を再現し、表面クラック幅と腐食深さの関係を実験結果と比較することで、加速試験結果を自然環境下の腐食に外挿するための補正係数を提案した。
本モデルは、腐食生成物の組成と密度の変化が腐食誘発クラックの進展に大きな影響を及ぼすことを示しており、鉄筋コンクリートの耐久性評価に有用な知見を提供する。
Stats
鉄筋腐食速度1 µA/cm2の場合、表面クラック幅と腐食深さの関係の傾きは、100 µA/cm2の場合の6倍大きい。
腐食電流密度が増加すると、水酸化鉄の質量分率が減少し、生成される腐食生成物の密度が高くなる。
Quotes
「加速腐食試験では、自然環境下の腐食に比べて、クラックの進展が遅くなる」
「腐食生成物の組成、特に酸化鉄と水酸化鉄の質量分率の比率が、腐食電流密度によって変化する」