Core Concepts
ナノスケールシリコンリボンに不均一なひずみを導入すると、熱伝導率が大幅に低下する。これは、ひずみ勾配に沿った格子振動スペクトルの広がりが、フォノン散乱を強化することで生じる。
Abstract
本研究では、カスタム製作したマイクロデバイス上でシリコンナノリボンを曲げることで不均一なひずみを導入し、その熱輸送特性への影響を調べた。その結果、ひずみ勾配が0.112%/nmの条件下で、熱伝導率が34±5%も低下することが明らかになった。これは、従来報告されている均一ひずみ下での熱伝導率への影響とは対照的である。
さらに、電子エネルギー損失分光法を用いて局所的な格子振動スペクトルを解析したところ、ひずみ勾配に沿ってフォノンピークが数meVシフトし、スペクトルが大幅に広がることが分かった。この特異な格子振動スペクトルの変化が、フォノン散乱を強化し、熱輸送を大幅に阻害していることが、第一原理計算によって示された。
本研究は、均一ひずみでは見られない、不均一ひずみ下における格子ダイナミクスの本質的な理解に新たな知見をもたらすものである。ナノスケール材料の物性制御において、不均一ひずみの重要性を明らかにした意義は大きい。
Stats
ひずみ勾配0.112%/nmの条件下で、熱伝導率が34±5%低下した。
ひずみ勾配に沿ってフォノンピークが数meVシフトし、スペクトルが大幅に広がった。
Quotes
「ナノスケール構造は、前例のない材料特性を生み出す極端なひずみを生み出すことができる。」
「均一なひずみは熱流に限定的な影響しか及ぼさないが、不均一ひずみの影響は明らかではなかった。」
「本研究は、不均一ひずみ下における格子ダイナミクスの本質的な理解に新たな知見をもたらした。」