Core Concepts
本稿では、機械学習を用いて都市空間におけるアート作品のキュレーションを探求し、現実と機械の知覚が交差する新たな芸術体験を提示する。
Abstract
ヘルシンキ・ビエンナーレ2023におけるAIキュレーション
本稿は、ヘルシンキ・ビエンナーレ2023で展示されたキュレーション作品に関する研究論文である。
研究目的
本研究は、人工知能(AI)をキュレーションの実践に応用し、AIキュレーションがもたらす可能性と課題を探求することを目的とする。具体的には、機械学習を用いてヘルシンキ美術館(HAM)のコレクションを再解釈し、機械の知覚を通してヘルシンキの都市空間を再構築することを試みる。
方法
- HAMが所蔵する屋外パブリックアートの地理情報と画像データ、および屋内コレクションの画像データとメタデータを使用。
- CLIPベースのモデルを用いて、全アートワークから視覚的・テキスト的な特徴を抽出。
- 屋外パブリックアートの特徴量と位置情報に基づき、屋内コレクションに仮想的な位置情報を割り当てる。
- 各アートワークの位置情報の360度パノラマ画像を取得し、Stable Diffusionを用いて、各アートワークのスタイルを反映した没入感のあるパノラマ画像を生成。
主な結果
- CLIPベースのモデルを用いることで、視覚的・テキスト的な類似性に基づいたアートワークの配置が可能となり、機械による独自の視点で都市空間を再解釈できることが示された。
- 生成された360度パノラマ画像は、現実の都市景観とアートワークのスタイルを融合させ、鑑賞者に新たな芸術体験を提供する。
結論
本研究は、AIキュレーションが、既存のアートワークに新たな文脈を与え、都市空間における芸術体験を拡張する可能性を示唆するものである。
意義
本研究は、AIとアートの関係を探求するだけでなく、都市空間におけるアートのあり方、そして鑑賞者の体験をどのように変容させることができるのかという問いを投げかけるものである。
制限と今後の研究
- 本研究では、CLIPモデルのトレーニングデータに含まれる文化的バイアスの影響を完全に排除できていない可能性があり、より多様な文化的背景を持つデータセットを用いた検証が必要である。
- また、本研究で生成されたパノラマ画像は静止画であり、よりインタラクティブな体験を提供するために、VR/AR技術との統合が期待される。
Stats
ヘルシンキ美術館(HAM)のコレクションは約10,000点、うち約2,500点が屋内外のパブリックスペースに設置されている。
屋外パブリックアート488点の地理情報と写真データを使用。
屋内コレクション1,744点の画像データとメタデータ(タイトル、制作年、作家名、キーワードなど)を取得。
1,744点の屋内コレクションに仮想的な位置情報を割り当て。
1,681箇所の位置情報から、半径250メートル以内の360度パノラマ画像を取得。
残りの3.61%の位置情報には、森(14%)と海(86%)の風景のHDR画像を生成して使用。
Quotes
"AI curation aims to offer new insights into digital cultural artifacts."
"The project uses Artificial Intelligence (AI) as a new means for curatorial practice, exploring the possibilities and difficulties that such new methods introduce."
"The city is thereafter populated by the new machinic world, where the user can navigate a geography that blurs the world of extant reality and that of machinic fiction."