Core Concepts
生体由来のマウス海馬組織からグルタミン酸作動性シナプスを同定し、クライオ電子トモグラフィーを用いて高解像度で可視化することで、シナプス構造の詳細を明らかにした。
Abstract
本研究では、グルタミン酸作動性シナプスを効率的に同定し、高解像度で可視化する手法を開発した。
まず、蛍光タグ付きのプレシナプス及びポストシナプス蛋白質を発現するトランスジェニックマウスを作製し、グルタミン酸作動性シナプスを蛍光顕微鏡で特定できるようにした。次に、グルタミン酸受容体サブユニットGluA2に特異的な抗体フラグメントをゴールド粒子と結合させ、クライオ電子トモグラフィーでGluA2受容体の局在を可視化した。
これらの手法を組み合わせることで、生体由来の未固定・無染色のマウス海馬組織切片からグルタミン酸作動性シナプスを高精度に同定し、クライオ電子トモグラフィーによる3次元構造解析を行うことができた。その結果、シナプス小胞、シナプス間隙、GluA2受容体の局在など、化学シナプスの主要な構造的特徴を明らかにすることができた。
本研究で開発した手法は、生体由来の神経組織におけるシナプス構造の詳細な可視化を可能にし、シナプス機能と構造の関係を解明する上で重要な知見を提供するものと期待される。
Stats
シナプス間隙の幅は20-30 nmであった。
GluA2受容体のAuNP標識部位間の距離は主に40-100 Åの範囲にあった。
GluA2受容体のAuNP標識部位とポストシナプス膜との距離は平均196 ± 22 Åであった。
GluA2受容体のAuNP標識部位とプレシナプス膜との距離は平均70 ± 29 Åであった。
Quotes
「生体由来の未固定・無染色のマウス海馬組織切片からグルタミン酸作動性シナプスを高精度に同定し、クライオ電子トモグラフィーによる3次元構造解析を行うことができた。」
「その結果、シナプス小胞、シナプス間隙、GluA2受容体の局在など、化学シナプスの主要な構造的特徴を明らかにすることができた。」