Core Concepts
神経エストロゲンは、アンドロゲン受容体の発現を促進することで、メダカの雄型行動を促進する。
Abstract
本研究では、メダカのcyp19a1b遺伝子欠損個体を用いて、神経エストロゲンが雄型行動に果たす役割を明らかにした。
cyp19a1b遺伝子は脳特異的なアロマターゼをコードしており、その欠損により脳内のエストロゲン合成が低下する。その結果、雄型の求愛行動と攻撃行動が著しく低下した。一方で、雄ホルモンの11-ケトテストステロンの脳内濃度は上昇していた。
この行動異常は、外部からエストロゲンを投与することで回復したことから、神経エストロゲンが雄型行動の発現に必須であることが示された。
さらに詳細な解析から、神経エストロゲンは、アンドロゲン受容体(AR)の発現を直接的に促進することで、雄型行動を誘起していることが明らかになった。具体的には、神経エストロゲンはESR1を介してarbの発現を、ESR2aを介してaraの発現を高めることで、求愛行動と攻撃行動をそれぞれ促進すると考えられる。
一方、cyp19a1b欠損雌は、雄への受容性が低下し、むしろ同性の個体に求愛行動を示した。これは、神経エストロゲンが雌の性行動の発現にも重要な役割を果たすことを示唆している。
以上の結果は、神経エストロゲンが、アンドロゲン受容体を介して、両性の性行動の発現を調節する重要な因子であることを明らかにした。
Stats
雄のcyp19a1b欠損個体の脳内エストラジオール濃度は野生型の16%まで低下した。
雄のcyp19a1b欠損個体の脳内11-ケトテストステロン濃度は野生型の2.2倍に上昇した。
雌のcyp19a1b欠損個体の脳内11-ケトテストステロン濃度は野生型の1.9倍に上昇した。
Quotes
"神経エストロゲンは、アンドロゲン受容体の発現を直接的に促進することで、雄型行動を誘起する。"
"cyp19a1b欠損雌は、雄への受容性が低下し、むしろ同性の個体に求愛行動を示した。これは、神経エストロゲンが雌の性行動の発現にも重要な役割を果たすことを示唆している。"