Core Concepts
社会的コミュニケーションによって獲得された食好み記憶は、皮質扁桃体の後内側核(COApm)における神経回路の活動によって長期記憶として統合される。
Abstract
本研究は、社会的に伝達された食好み記憶(STFP)の長期記憶化メカニズムを明らかにしている。STFPは生存に重要な社会的学習の一形態であり、動物が他個体から好ましい食物の匂いを学習し、長期記憶として保持する過程を示す。
研究では、COApmがSTFP記憶の統合に中心的な役割を果たすことを明らかにした。COApmへの神経伝達を阻害すると、STFP記憶の固定化が選択的に障害されるが、記憶の獲得や想起は保たれた。COApmは、嗅球からの嗅覚入力と前嗅核への出力を統合することで、STFP記憶の長期固定化を担っている。
さらに、STFP記憶形成にはタンパク質合成が必要であり、COApmにおいて記憶形成に伴う遺伝子発現変化が観察された。これらの結果から、STFP記憶の長期固定化には、COApmにおける特異的な遺伝子発現プログラムを伴う神経回路の再構築が重要であることが示された。
本研究は、社会的に伝達された記憶の長期固定化メカニズムを神経回路レベルで解明したものであり、記憶の獲得、固定化、想起といった過程を区別して理解する上で重要な知見を提供している。
Stats
COApmへの神経伝達阻害によりSTFP記憶の固定化が選択的に障害された。
COApmにおいてSTFP記憶形成に伴う特異的な遺伝子発現変化が観察された。
Quotes
「社会的コミュニケーションは意思決定を導き、生存に不可欠である。」
「STFP記憶の固定化にはタンパク質合成が必要であり、COApmにおける遺伝子発現変化が重要である。」