Core Concepts
大腸菌の細胞分裂部位の時空間的な制御に寄与するMin システムにおいて、細胞の伸長に伴いMinD濃度勾配が徐々に急峻になり、中心部のMinD濃度が低下することが明らかになった。これにより、FtsZリングの適切な位置決めが可能になると考えられる。
Abstract
本研究では、大腸菌の Min システムにおける MinD タンパク質の濃度勾配の可塑性について明らかにした。
まず、細胞の伸長に伴い、MinD濃度勾配が徐々に急峻になることを示した。すなわち、細胞が伸長するにつれて、細胞中央部のMinD濃度が低下する一方で、両極部のMinD濃度が高くなる。この濃度勾配の変化は、細胞分裂阻害因子MinCの分布と連動し、FtsZリングの適切な位置決めを可能にすると考えられる。
一方で、MinDの振動周期は細胞の伸長に伴ってほとんど変化しないことが明らかになった。これは、MinDとMinEの反応速度定数を調整することで、振動周期を維持しつつ濃度勾配を変化させることができることを示唆している。
さらに、数理モデルの解析から、MinD濃度勾配の変化には、膜への結合/解離反応速度とATPへの核酸交換反応速度の調整が重要であることが明らかになった。
以上の結果は、Min システムにおける濃度勾配の可塑性が、細胞分裂の時空間的制御に重要な役割を果たしていることを示している。
Stats
細胞あたりのMinD分子数は1844-2537個、濃度にして0.92-1.26 μMの範囲で変化する。
細胞中央部(200 nm以内)のMinD分子数は、細胞分裂時に約20分子まで減少する。
Quotes
細胞が伸長するにつれて、MinD濃度勾配が徐々に急峻になる。
細胞中央部のMinD濃度は細胞の伸長に伴って低下し、細胞分裂まで低い濃度を維持する。