Core Concepts
ERKシグナル伝達は、未分化状態の維持と分化状態への移行の両方を制御する。ERKの活性化は未分化状態の転写因子ネットワークを解体し、一方で主要な多能性因子Oct4の発現を維持することで、幹細胞の分化状態への移行を促進する。
Abstract
本研究では、マウス胚性幹細胞(ESC)の未分化状態から分化状態への移行におけるERKシグナル伝達の役割を明らかにしている。
未分化状態のESCでは、ERKの活性化によりNanogタンパク質が選択的に減少し、未分化状態の転写因子ネットワークが解体される。一方で、ERKの持続的な活性化は主要な多能性因子Oct4の発現を維持し、分化状態への移行を促進する。
具体的には以下の知見が得られた:
ERKの活性化レベルの違いにより、個々のESCが非同期的に未分化状態から脱出する。ERKの活性化はNanogタンパク質の減少を引き起こし、これが未分化状態の維持に必要なトランスクリプション因子ネットワークの崩壊につながる。
ERK活性の抑制下でNanogをノックダウンすると、ESCは未分化状態から脱出するが、分化状態への移行は阻害される。これは、ERKシグナルが主要な多能性因子Oct4の発現維持にも必要であることを示している。
ERK活性の抑制下でも、Oct4の強制発現によって分化状態への移行が部分的に回復する。
以上より、ERKシグナル伝達は、未分化状態の維持と分化状態への移行の両方を制御する重要な役割を果たすことが明らかになった。
Stats
ERK活性化の阻害により、未分化状態のESCの約70%がNanogタンパク質を維持する
ERK活性化の促進により、Nanogタンパク質の減少が早期に起こる
ERK活性化の阻害下でNanogをノックダウンすると、Oct4の発現が消失する
Quotes
"ERK signalling both dismantles the naïve state and preserves pluripotency."
"ERK activity propels naïve state exit"
"ERK signalling is necessary after exit for progression to the formative state"