Core Concepts
本研究では、構造化スパース行列に対して効率的に変分量子線形ソルバーを適用する新しいアプローチを開発した。このアプローチでは、パウリ基底ではなく代替の基底を使用することで、行列サイズに対して対数的にスケールする項数でLCU分解を行うことができる。さらに、この非ユニタリ演算子に対して、ユニタリ補完の概念を用いて、グローバルおよびローカルなVQLS目的関数を効率的に計算する量子回路を設計した。
Abstract
本論文では、構造化スパース行列に対して効率的に変分量子線形ソルバー(VQLS)を適用する新しいアプローチを提案している。
まず、一般的なVQLS フレームワークについて説明する。VQLSは、線形方程式Ax = bを解くためのハイブリッド古典-量子アルゴリズムである。VQLSでは、行列Aのリニア結合ユニタリ(LCU)分解を使用して、グローバルおよびローカルな目的関数を定義する。しかし、パウリ基底を使用すると、行列サイズに対して二次的にスケールする項数が必要となる可能性がある。
そこで本研究では、代替の基底(シグマ基底)を使用することで、行列サイズに対して対数的にスケールする項数でLCU分解を行うことができることを示す。シグマ基底は非ユニタリ演算子から構成されるため、ユニタリ補完の概念を用いて、グローバルおよびローカルなVQLS目的関数を効率的に計算する量子回路を設計する。
具体的には、熱方程式の離散化から得られる行列を例として取り上げ、シグマ基底を用いた分解手法を説明する。さらに、ユニタリ補完に基づく量子回路の構成方法を詳述し、リソース見積もりを行う。最後に、他の関連手法との比較を行い、提案手法の利点を議論する。
Stats
熱方程式の離散化から得られる行列サイズNに対して、パウリ基底を使用した場合の項数はO(N^2)であるのに対し、シグマ基底を使用した場合の項数はO(log N)となる。
Quotes
"本研究では、構造化スパース行列に対して効率的に変分量子線形ソルバー(VQLS)を適用する新しいアプローチを提案している。"
"シグマ基底は非ユニタリ演算子から構成されるため、ユニタリ補完の概念を用いて、グローバルおよびローカルなVQLS目的関数を効率的に計算する量子回路を設計する。"