Core Concepts
がん細胞の好気的解糖代謝から嫌気的解糖代謝への切り替え(ワールブルグ効果)により蓄積した乳酸がNBS1のラクチル化を促進し、ホモロジー組換え修復を活性化させることで、DNA修復能力を高め、化学療法耐性を獲得する。
Abstract
本研究は、がん細胞のワールブルグ効果によって蓄積した乳酸が、DNA修復タンパク質NBS1のラクチル化を促進し、ホモロジー組換え修復を活性化させることで、がん細胞の化学療法耐性獲得に寄与することを明らかにした。
具体的には以下の知見が得られた:
- NBS1のK388残基のラクチル化が、MRE11-RAD50-NBS1(MRN)複合体の形成と、DNA二本鎖切断部位へのホモロジー組換え修復タンパク質の集積に必須である。
- NBS1のラクチル化酵素はTIP60、脱ラクチル化酵素はHDAC3である。
- NBS1のK388ラクチル化レベルが高いほど、術前化学療法に対する予後が悪い。
- LDHA欠損やLDHA阻害剤stiripentolによる乳酸産生抑制は、NBS1のラクチル化を減少させ、DNA修復能力を低下させ、化学療法耐性を克服する。
以上より、がん細胞の乳酸代謝がDNA修復機構を制御し、化学療法耐性獲得に寄与することが明らかになった。乳酸産生抑制は新たな治療戦略となる可能性がある。
Stats
NBS1のK388ラクチル化は、MRN複合体形成とDNA二本鎖切断部位へのホモロジー組換え修復タンパク質の集積に必須である。
NBS1のK388ラクチル化レベルが高いほど、術前化学療法に対する予後が悪い。
LDHA欠損やLDHA阻害剤stiripentolによる乳酸産生抑制は、NBS1のラクチル化を減少させ、DNA修復能力を低下させ、化学療法耐性を克服する。
Quotes
「乳酸蓄積がNBS1のラクチル化を促進し、ホモロジー組換え修復を活性化させることで、がん細胞の化学療法耐性獲得に寄与する」
「NBS1のK388ラクチル化レベルが高いほど、術前化学療法に対する予後が悪い」
「乳酸産生抑制は新たな治療戦略となる可能性がある」