Core Concepts
線形ソルバーを通じた微分には低レベルアプローチと高レベルアプローチがあり、それぞれの長所短所を実験的に明らかにした。
Abstract
本論文では、線形ソルバーを通じた微分の2つのアプローチ、低レベルアプローチと高レベルアプローチを実験的に比較・検討した。
低レベルアプローチは、ソルバーの内部実装を直接微分するものである。一方、高レベルアプローチは、ソルバーを1つの関数として扱い、行列計算の規則に基づいて微分を行うものである。
実験では、SuiteSparseコレクションの65の非対称行列を用いて、GMRES、TFQMR、BiCGStabの3つのソルバーについて比較を行った。その結果、以下のような知見が得られた:
一般的に、高レベルアプローチは低レベルアプローチと同等かそれ以上の精度を達成できる。
ただし、ソルバーによっては低レベルアプローチでも十分な精度が得られる場合がある。特にTFQMRではこの傾向が見られた。
BiCGStabでは、低レベルアプローチの精度が大幅に劣る。
つまり、一概に低レベルアプローチを避けるべきではなく、ソルバーの特性に応じて適切なアプローチを選択する必要がある、という結論に至った。
今後の課題としては、逆モードの微分や、より多様なソルバーやプリコンディショナーの検討、丸め誤差の影響の定量化などが挙げられる。
Stats
BFWA398行列の条件数は2.993111e+03である。
BFWA62行列の条件数は5.530615e+02である。