Core Concepts
本稿では、ローカル電力市場(LEM)構造と、信頼性とコミットメントを監視するメカニズムを通じて、信頼できるIoT協調資産(ICA)を活用することで、サイバー攻撃に対する電力網のレジリエンスを向上させるフレームワークを提案しています。
Abstract
本稿は、電力網におけるサイバーセキュリティとレジリエンス強化のための新しいフレームワーク「EUREICA(Efficient, Ultra-REsilient, IoT-Coordinated Assets)」を提案する研究論文である。
背景と問題提起
- 電力網は、従来の物理的なシステムから、測定、制御、通信、計算、および作動を行うデジタルデバイスを備えたサイバーフィジカルシステムへと進化している。
- 再生可能エネルギー、フレキシブルロード、蓄電システムなどの分散型エネルギーリソース(DER)の普及が進み、効率性と持続可能性の向上が期待される一方で、サイバー攻撃という新たな脆弱性が生まれている。
- サイバー攻撃は、停電、自然災害、カスケード障害などの深刻な混乱後、重要な負荷に耐え、迅速に復旧するグリッドの能力であるレジリエンスを脅かす可能性がある。
提案手法:EUREICAフレームワーク
EUREICAは、ローカル電力市場(LEM)構造と、信頼性とコミットメントを監視するメカニズムを通じて、信頼できるIoT協調資産(ICA)を活用することで、電力網のレジリエンスを向上させるフレームワークである。
- 階層型LEM: 配電系統運用者(DSO)、一次市場運用者(PMO)、二次市場運用者(SMO)からなる階層的な市場構造を提案。PMOは、変電所レベルで一次市場を運営し、SMOは、二次系統レベルで二次市場を運営する。
- 状況認識(SA)の強化: LEMを通じて、電力注入や消費削減が可能なローカルDERの場所や電力量に関する情報を収集し、SAを向上させる。
- レジリエンススコア(RS): 各DERに対して、市場でのパフォーマンスやセキュリティに基づいてRSを算出。RSは、コミットメントスコア(CS)と信頼性スコア(TS)を組み合わせたものであり、DERの信頼性とコミットメントを評価する指標となる。
- 分散型意思決定: PMOとSMOは、EUREICAフレームワークを通じて提供されるSAとRSに基づいて、サイバー攻撃の影響を軽減するための最適な対策を分散的に決定する。
有効性検証
- IEEE 123ノードテストフィーダを用いたシミュレーションにより、EUREICAフレームワークが、様々なサイバー攻撃に対して効果的に機能することを確認。
- 攻撃の種類としては、発電資源の喪失、負荷の急増、通信障害などを想定。
- EUREICAフレームワークは、攻撃を迅速に検知し、信頼できるICAを再ディスパッチすることで、電力網の安定供給を維持できることを実証。
結論
EUREICAフレームワークは、信頼できるICAと分散型意思決定を活用することで、サイバー攻撃に対する電力網のレジリエンスを向上させる効果的なアプローチであると言える。
今後の展望
- より大規模で複雑な電力網への適用
- リアルタイムでの攻撃検知と対応
- プライバシーとセキュリティの強化
Stats
攻撃1aでは、10のSMOノードが攻撃され、フィーダー全体で合計36kWの負荷増加(発電不足)が発生。
攻撃1aの緩和後、電力輸入量は123kW減少。
個々のSMOノードにおけるフレキシブルロードの削減量は、一次フィーダーノードあたり最小0.55kWから最大7.8kWの削減までさまざまである。
Quotes
「我々は、本稿において、モノのインターネット(IoT)デバイスのネットワークを含む、適切に調整された資産を通じて、グリッドのレジリエンスを実現するためのフレームワークを提案する。」
「この市場構造は、配電網全体でローカルに、一次および二次回路と電気的に同じ場所に配置され、運用者は、特定の地域内の対応するノードであらゆるDERをスケジューリングする。」
「EUREICAフレームワークで提案するものは、攻撃が発生したことを検出するSAを提供し、このSAを用いて、攻撃の影響を軽減し、分散型意思決定戦略を通じてグリッドのレジリエンスを確保するために、信頼できるICAを展開することである。」