Streptomyces細菌が生産する傘状毒素粒子が競合細菌の菌糸成長を阻害する

Core Concepts

Streptomyces細菌は、小分子抗菌物質に加えて、大型の毒素タンパク質複合体「傘状粒子」を生産・分泌し、他のStreptomyces種の菌糸成長を特異的に阻害する。

Abstract

本研究では、Streptomyces細菌が生産する新たな抗菌メカニズムを明らかにした。Streptomyces細菌は、小分子抗菌物質に加えて、大型の毒素タンパク質複合体「傘状粒子」を生産・分泌することで、他のStreptomyces種の菌糸成長を特異的に阻害することが示された。
クライオ電子顕微鏡解析により、傘状粒子は長い茎の上に環状の冠部を持つ構造であることが明らかになった。冠部には毒素タンパク質のリピート配列と、レクチン様ドメインが配置されている。Streptomyces coelicolorは3種類の傘状粒子を生産し、それぞれ毒素とレクチンの組成が異なる。
傘状粒子を含む培養上清は、多様な細菌群の中から特定のStreptomyces種の菌糸成長を強力に阻害した。その標的の1つであるStreptomyces griseusでは、単一の毒素タンパク質が菌糸成長を急速に停止させることが示された。
これらの結果から、Streptomyces細菌の傘状粒子は、繁殖期に産生される小分子抗菌物質とは異なり、栄養菌糸期の競争に関与することが明らかになった。系統解析の結果、この傘状粒子メカニズムはStreptomyces属を超えてActinobacteria門の広範な細菌種に存在することが示唆された。

Stats

Streptomyces coelicolorは3種類の異なる傘状粒子を生産する。
傘状粒子は、長い茎の上に環状の冠部を持つ構造をしている。
傘状粒子の冠部には、毒素タンパク質のリピート配列とレクチン様ドメインが配置されている。
傘状粒子を含む培養上清は、特定のStreptomyces種の菌糸成長を強力に阻害する。
Streptomyces griseusの菌糸成長は、単一の傘状粒子毒素タンパク質によって急速に停止する。

Quotes

「Streptomyces細菌は、小分子抗菌物質に加えて、大型の毒素タンパク質複合体「傘状粒子」を生産・分泌し、他のStreptomyces種の菌糸成長を特異的に阻害する。」
「傘状粒子は、長い茎の上に環状の冠部を持つ構造をしており、冠部には毒素タンパク質のリピート配列とレクチン様ドメインが配置されている。」
「傘状粒子を含む培養上清は、多様な細菌群の中から特定のStreptomyces種の菌糸成長を強力に阻害した。」

Key Insights Distilled From

Streptomyces umbrella toxin particles block hyphal growth of competing species - Nature

by Qinqin Zhao,... at www.nature.com 04-17-2024

https://www.nature.com/articles/s41586-024-07298-z

Deeper Inquiries

なぜStreptomyces以外の細菌種でも、傘状粒子メカニズムが見られるのだろうか?

Streptomyces以外の細菌種でも傘状粒子メカニズムが見られる理由は、このメカニズムが競争優位性を持つためです。Streptomycesが他の細菌との競争で使用するように、他の細菌も同様に競争に勝つためにこのメカニズムを進化させている可能性があります。傘状粒子は特定の細菌種に対して選択的に作用するため、他の細菌も同様のメカニズムを持つことで、特定の競合相手に対して有利になる可能性があるからです。

傘状粒子の毒素とレクチンの組み合わせが、どのように標的細菌種の選択性を決めているのだろうか?

傘状粒子の毒素とレクチンの組み合わせが標的細菌種の選択性を決める主な要因は、特定の受容体や表面構造に対する相互作用によるものです。毒素とレクチンの組み合わせは、特定の細菌種の表面構造や受容体と相互作用し、その結果、特定の細菌種にのみ効果を発揮するようになります。この相互作用によって、傘状粒子は特定の標的細菌種を選択的に攻撃することが可能となります。

Streptomyces細菌は、なぜ小分子抗菌物質と傘状粒子という2つの異なる抗菌メカニズムを使い分けているのだろうか?

Streptomyces細菌が小分子抗菌物質と傘状粒子という2つの異なる抗菌メカニズムを使い分ける理由は、それぞれが異なる段階や状況での競争に適しているためです。小分子抗菌物質は広範囲の細菌に対して効果を発揮し、生殖成長の初期段階で生産されるため、競争相手の増殖を阻害するのに適しています。一方、傘状粒子は特定の標的細菌種に対して選択的に作用し、他のStreptomyces種との競争に適しています。このように、Streptomycesは状況や競争相手に応じて適切な抗菌メカニズムを使い分けることで、競争力を維持しているのです。