Core Concepts
植物NLRタンパク質SlNRC2は、オリゴマー化によって不活性な状態を維持し、さらにイノシトールリン酸が補因子として結合することで活性化が抑制される。
Abstract
本研究は、植物免疫に重要な役割を果たすNLRタンパク質の自己抑制と活性化機構を明らかにしたものである。
まず、トマトのNLRタンパク質SlNRC2がダイマーやテトラマーなどのオリゴマーを形成し、これらの高次構造によって不活性な状態が安定化されることが示された。オリゴマー化は、SlNRC2が活性型の構造に移行するのを阻害する。
さらに、クライオ電子顕微鏡解析によって、SlNRC2の C末端LRRドメインにイノシトールヘキサリン酸(IP6)やイノシトールペンタリン酸(IP5)が結合していることが明らかになった。この結合は質量分析でも確認された。IP結合部位の変異によって、イノシトールリン酸の結合が阻害され、病原菌に対する細胞死反応が亢進した。
以上の結果から、NLRタンパク質の自己抑制には、オリゴマー化とイノシトールリン酸の結合という2つの負の調節機構が存在することが示された。この知見は、植物免疫応答の精緻な制御メカニズムの理解に貢献するものである。
Stats
SlNRC2はダイマー、テトラマー、高次オリゴマーを形成する。
SlNRC2のC末端LRRドメインにはIP6やIP5が結合する。
SlNRC2のIP結合部位の変異によって、病原菌に対する細胞死反応が亢進する。
Quotes
「オリゴマー化は、SlNRC2が活性型の構造に移行するのを阻害する」
「IP結合部位の変異によって、イノシトールリン酸の結合が阻害され、病原菌に対する細胞死反応が亢進した」