Core Concepts
マリネスコ-ショーグレン症候群の遺伝性多系統疾患に対して、トラゾドン、ジベンゾイルメタン、タウロウルソデオキシコール酸は運動機能障害と神経変性を予防できない。
Abstract
マリネスコ-ショーグレン症候群(MSS)は、SIL1遺伝子の機能喪失変異に関連する遺伝性の多系統疾患である。以前の研究で、PERK阻害薬のGSK2606414がwoozyマウスのプルキンエ細胞変性と運動失調の発症を遅らせることが分かった。しかし、GSK2606414には膵臓への毒性があり、woozyフェノタイプを完全に救助できない。
本研究では、PERKシグナルを部分的に阻害し神経保護作用のあるトラゾドンとジベンゾイルメタン(DBM)、およびタンパク質折り畳みを促進するタウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)の効果を検討した。4週齢から9週齢までの5週間、症状発症前の段階からマウスに慢性投与した。
トラゾドンは、ビーム歩行テストでわずかに運動機能を改善したが、プルキンエ細胞のCHOP発現やプルキンエ細胞変性を抑制しなかった。DBMとTUDCAは、運動機能や神経変性に全く効果がなかった。薬物動態解析では、woozyマウスにおける代謝動態の変化は認められなかった。
以上の結果から、トラゾドン、DBM、TUDCAは、他の神経変性疾患モデルマウスで有効だった用量設定にもかかわらず、MSS前臨床モデルでは疾患修飾効果を示さないことが明らかになった。
Stats
woozyマウスのビーム歩行テストでは、7週齢から有意な運動機能障害が認められた。
トラゾドン投与woozyマウスは、ビーム歩行テストの成績が対照群に比べ若干良好だった。
プルキンエ細胞のCHOP陽性細胞数は、トラゾドン、DBM、TUDCA投与群とコントロール群で差がなかった。
トラゾドンおよびその主代謝物m-CPPの薬物動態は、woozyマウスとC57BL/6Jマウスで大きな違いはなかった。